「財団法人 日本証券経済研究所 証研レポート」


この中では「証券販売チャネルの最近の状況」と「〈世界的不均衡〉の拡大について」あたり。

証券販売チャネルの最近の状況 二上季代司」(PDFファイル)


最近の証券販売チャネルの動向についてのまとめ記事。主な内容は以下の3点。

  1. ネット専業証券会社は預かり資産、新規口座開設ともにピークアウト
    • 手数料引き下げ競争も限界にきた
    • 素人投資家がライブドアショック等で焼け出されててかわいそうですね
  2. 銀行窓販はやっぱり元本保証型しか売れてない
  3. 証券会社はラップ口座などのフィービジネスを志向していくんだろうがまだ先は長いね


ネット専業証券会社のチキンレースはいくとこまでいった感があるので、今後の差別化はやっぱりサービスの充実だよねという話。で、ネット証券の顧客の大半は株未経験の個人投資家で占められており、最近の市場の乱高下でずいぶんと痛んだ人々が多いので、これからはちゃんと投資家教育と信頼できる情報提供をしていくことがサービスの充実につながるよねという話。


かなりのいまさら感が漂うわけだが、次の記述は大笑い。

最近の分析によると、新聞雑誌などで「カリスマトレーダー」などともてはやされているわりには、ネット投資家のパフォーマンスは大したことは無く、日経平気並で、ライブドアショックのような乱高下ではむしろ大きな損失が出ていること、また日本のネット投資家にはファンダメンタル分析を全く無視する投資家が多いこと、が指摘されている*1。 (強調、ryozo18)


mixiのPERみてお前らなんとも思わないのかと小一時間(ry



〈世界的不均衡〉の拡大について 伊豆久」(PDFファイル)


最近の中国を代表する東アジアの異常な外貨準備高&経常黒字と、アメリカの異常な対外債務拡大と消費拡大が奇妙な均衡を保っていることの解説記事。本来ならドル暴落が起きるはずなんだが、双方の政策担当者の奇妙な利害一致で危ういながらも不均衡拡大のメカニズムが維持されているという話。


中国等の外需依存経済は、自国通貨の低位安定のために大量のドル買い市場介入を行って大量の外貨準備を持っている。この外貨(ほとんどドル建て)は、今度は米国債に流れており、これがアメリカの低金利と消費拡大を支えており、そしてこの消費拡大がさらに中国等の輸出を促進するというメカニズム。


で、中国の話で言えば、外貨準備は既に1兆ドルの水準を越えているので、仮に元高に振れるとえらい額の為替差損が発生するというリスクを負っている。そして実際元高圧力はますます強まっているんだが、どうも中国の政策担当者は、現在の中国の成長エンジンである「外国企業導入・対米輸出」を鈍化させるよりも、為替差損のリスクのほうが好ましいという政策プライオリティを持っているということになる、と。そして一方のアメリカも対中貿易赤字を問題視する声は一部にあるけど、現在の低インフレ状態なら別にいいんじゃね?それに急に引き締めて金利上げると住宅バブル崩壊というハードランディングになることのリスクはでかいよねという話になる、と。


まあこの状態がいつまでも続けられるとは思わないんだが、この奇妙な均衡を解消するにはBRIC's等も含めたより広範囲の「新・プラザ合意」的枠組みが必要なんじゃないかというのがレポートの結論。


ま、そうかもね。でもブッシュ政権下でこういう決断やるとは思えないしなあ。個人的にはマクロ経済運営はやっぱり民主党のほうが好きです。いや、関係ないですね。

*1:熊野英生「デイトレーダーの隆興をどう見るか」『証券アナリストジャーナル 2006年6月』