失業「率」と失業の「質」

http://d.hatena.ne.jp/yukihonda/20051203


「マクロ経済政策は短期的なミクロ的なキャリア破壊に対処できないのでは?現実に起こっているミクロ的キャリア破壊に対処するためには実効的な介入(「制度的に均等待遇の導入がなされない限り」)が必要だ」という心配に対して、一般的な経済学の人は次のように答えると思われ。

大前提
「マクロ的な景気回復が起きれば、失業「率」は改善するよ」
前半の疑問に対して
「そうね、確かに失業の「質」にまで踏み込むのはマクロ政策では無理かもね」
後半の意見に対して
「でもそういう市場介入策はミクロ経済学的にはあまり望ましくないから慎重に行うべきだと思う」


失業「率」ではアグリゲートされてしまっている個別の失業の「質」、ここではキャリア形成初期段階で失敗してカタストロフ的なダメージを受けてしまった若年層をどうすれば救えるかという問題設定に対して、マクロの人が言えることは少ない(リフレになれば多少は今よりよくなるよとしかいえない)。でもミクロの人も市場介入的・補助金的なやり方には基本的に反対の立場を取ると思う(価格の神様はいるんだよと言っちゃう)。


本田先生の疑問a〜cは、マクロ経済に対する勘違いが含まれているようだが(bewaad氏が丁寧に回答済み)、本来のミクロ的な問題意識とは基本的には関係がない。


たしかに今問題とされている若年層のキャリア形成に不可逆的なダメージを与えた原因のかなりの部分は、景気後退によって引き起こされてしまったかもしれない。でも、それは既に起こってしまった問題であり、その不幸にして既に発生してしまったピンポイントな不可逆的ダメージをマクロ政策(リフレ政策もその一つ)で回復できるかどうか。そんなのはわからんよ、一定の層は改善するんじゃね?としかいいようがないんジャマイカ。ただ、マクロ政策(例えばリフレ政策)によって景気が回復すれば、将来的にはこの手の不可逆的ダメージを負う層は確実に減少するだろうけど。


でも、本田先生の「制度的に均等待遇の導入がなされない限り」とかという点については、リフレ派だろうが日銀擁護派だろうがミクロ経済学を学んだ人間にとっては本能的に忌避感がでちゃうだろう。「市場にあんまり手をつっこむものじゃありませんわよ」と。
⇒韓流好きなリフレ派氏コメント「均等待遇の問題圏がわからないけれども、もしフリーターと正社員の報酬を均等に規制すべきだ、という議論ならば明確に僕は反対ですね。


なので、マクロ的な疑問(=キャリア形成失敗の可能性を減らす景気回復を実現するにはどうするか)はとりあえず一旦脇に置いておいて、経済学者も納得できるミクロ経済学的制度設計(=たとえば典型と非典型との間の流動性促進)に注力したほうがいいのではないかと無責任に言ってみるテスト。ミクロ経済の人と共同研究やったほうがいいのでは?と勝手に心配してみますが余計なお世話ですかそうですか。