Googleへの規制に関して

まずは発端のこの問題を自分なりに整理しておく。



Google八分が引き起こすであろう問題は何か?

Google八分が侵害している権利とは何かを考えた。先方の議論に乗っかるのであれば言論の自由となるんだろうが言論の自由は本当に脅かされているのかまとめてみる。

言論の自由
そもそもBlogなりサイトは運営できており、その更新は続いている。別に言論の自由が制限されているとはとてもいえない。それにそもそも言論の自由とは『政府』に対する言論の自由がもともとの保障されるべき権利であって、全ての表現活動が言論の自由で保障されるわけではないことは周知の事実。ということで、言論の自由が脅かされているとはいえない。
知る権利
国民の知る権利という概念はまだまだあいまいなものだと思う。政府に対しては一定の情報公開が義務付けられているが、民間や個人は逆に情報は保護されるべきという論調になっている。この点で言えばGoogleは、国民のプライバシー侵害のほうを責められている立場であり、知る権利を阻害しているとは言いがたい。ということで、Googleは知る権利を脅かしているというというよりは、個人情報へのアクセス管理をもっとすべきという立場なんじゃね?
情報へのアクセス
唯一Google八分で責められるとしたら、この情報へのアクセスの利便性を損ない、実質的に情報アクセスを不可能にしたということだろう。しかし、Googleが「全てのアクセスを一元的に仕切っており、そのアクセス管理が恣意的・反公共的に行われている」というのであれば、この批判は当てはまるが、そんなことはない。まず代替手段が山のように存在することが一つ。Yahooでもいいしgooでもいいしはてなでもアクセスする手段はいくらでもある。しかも当初Google八分で問題になった「悪徳商法 マニアックス」も、本体サイトはいまだGoogle八分が続いているものの、エイリアスサイトを立ち上げており、そのサイトはGoogleで「悪徳商法 マニアックス」を検索すればトップに来る。つまり回避手段というのはいくらでもあるわけであり、Googleがインデックスから削除しただけではアクセス手段を奪ったとはいえない。


話は若干脱線するが、この当初の主張(Google八分言論の自由を脅かしている)をリアルワールドに当てはめると、それこそ全ての本屋は規制されなきゃいけなくなんじゃね?だって、既存の出版物へのアクセスを「本屋の勝手な判断で制限している」ことになるんだから。

Google以外の他の検索サービスもこれをやりだしたらどうなるか?

まずそんなことは起こらないし、仮に起こったとしたら、それは検索サービス事業者にそのような圧力をかけたほうこそを規制すべきだ


Yahoo!もgooもLycosもその他全ての検索サービスが特定のサイトのインデックスを削ったとしても、上で言ったように個々で見ればそれはなんら言論の自由を侵してはいない。全てのISPが特定の個人がサイトを持つことを拒否したってんなら話は別だが、別に検索サービスに乗っからないことそれ自体は単なる情報へのアクセス利便性が損なわれただけだ。


しかも別に検索サイトだけが情報の窓口ってわけじゃない。リンク貼ればいい話だし、ソーシャルブックマークでもいい。たしかにGoogleの利便性は絶大だが、じゃあリアルワールドに存在する非常にアクセスが難しい情報はそれ自体が悪なのか?違うだろ。存在することが重要なのであって、アクセスが容易かどうかは二次的な問題だ。Googleとその他全ての検索サービスから外れる情報があったとしても、それは言論の自由の侵害ではない(焚書でもないよ)。


そしてこちらのほうが重要だが、検索サービス事業者に対して「当方の権利が侵害されているので、インデックスから削除して欲しい」と主張する権利は我々全員が持っているはずだ。ただ、この主張が本当に当事者の権利を脅かしているか、さらにそれは公共の福祉に合致するかどうかという点が判断基準だろう。


例えばの話だが、田中真紀子の娘の報道をした週刊誌を差し止める事件があった。あのときの司法判断自体がどうだったかという点は置いておくとして、あのときの論点は「公人であれば多少のプライバシーは国民の知る権利の前に制限されてもやむをえない」という主張に対して、「元外務大臣の娘は公人か」という点だったと記憶している。


僕はこういう主張の権利は留保しておきたいし、Googleが僕のプライバシーを侵害しているのであれば削除を要求する。他の検索サイトも同様だ。


しかし、今現在起こっているGoogle八分はこのような話ではないという点を次に見ていく。

悪徳商法 マニアックスのケース

⇒"googleから、削除された理由(わけ)"
http://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/topic/topics2004a.html#0115


ここにGoogleからの回答が載ってる。

ご連絡ありがとうございました。お返事を差し上げるのが遅れました事をお詫び申し上げます。


弊社では Googleインデックスに表示されるドメインが、登録されている国の法律に従っている事を確認するよう努めています。弊社では、法律で公認されているコンテンツを削除すること及び情報アクセスの制限を行っておりません。しかしながら、特定のページのコンテンツが日本の法律に違反していると判断された場合、そのページをGoogle.co.jpから削除することがあります。この場合、クレームを頂いたユーザーから詳細情報を記載した署名入り文書を弊社法律部に提出していただく必要があります。


この度ご指摘になったページは、日本の法律上、名誉毀損罪(刑法230条)及び営業妨害罪(刑法233条)に該当すると判断され、Google.co.jp及び弊社パートナーサイトから削除させていただきました。何卒ご了承いただきますようお願いいたします。


今後とも Google をどうぞよろしくお願いいたします。


まあようは法律違反の疑いがあるからということなんだが、とりあえず一連の申請手続きというものは取られているわけで、Google自体が恣意的な判断をしたとは言いにくい(ただ判断があまりに法人寄りになってるよねというつっこみはあるけど)。他のケースも似たり寄ったりで、ようは何らかの法律違反・犯罪の疑いがあるから削除しましたというケースが大半。この手続き自体を批判することは出来ないだろ。


問題は、この削除以来の根拠となる法律の中身が今のネットにあってないって点であり、これが本来のCODEの提示した問題だ。

圏外からのひとことのケース

圏外からのひとことGoogle八分をくらっているわけだが、こちらはその理由がよく分からん。朝日新聞に対する痛烈な批判記事をよく投稿していたのは知っているが、Google朝日新聞からなんらかの通知があったのかどうか。


このケースは結構危惧すべきだと思うんだが、まあそれでも言論の自由は担保されてるなとは思う。別に削除されてねえし。


問題なのは、削除要求それ自体を禁止することではなく、公共の福祉に反するであろう削除以来が通ってしまう状況なんじゃね?ということだ。

強すぎる著作権管理こそが問題なのであって、Googleを批判するのは筋違い

上であげたように悪徳商法マニアックス以外でもGoogle八分は存在するが、そのうちのいくつかは「著作権侵害」を理由にGoogleに対してインデックスからの削除を要求しているようだ。しかし大半はフェアユースといえる範囲だと僕は思うし、これは行き過ぎの著作権の濫用だと思う。


なので、規制すべき対象は「著作権の濫用を行ってる人・事業者」であり、Googleではない。たしかにGoogleの社内での法的判断が正しかったかどうかという点は議論されるべきだが、民間企業が完璧な法的判断を下せるとは思えないし、仮にそんな企業があってそこが法律判断を形成しだしたらそっちのほうが問題だ。裁判で争えよ、という話になる。ただ現在の著作権程度の話だと裁判で争うコストのほうが高すぎるので、まあとりあえず削除しとくか、別に言論の自由とかには抵触しねえし、という判断をGoogleが行うのは当たり前だと思う。


Google規制を論じる前に、テレビ局にお勤めの方は朝日新聞が本当にGoogleにFAXを送って圧力をかけたのかどうかという点を検証していただきたい。それこそ国民の知る権利を充足する行動だと思うんだが。