中国のエネルギー事情どうよ?

この問題は色々見てるうちになんかよく分からなくなってきた。理由としては短期と長期、楽観と悲観という二つの軸がマトリックスになっていて、当然のことだが、この四つの相反する立場それぞれのメッセージに重なる部分もあれば矛盾する部分もあり、なんか見ていくとよくわからないことになっちゃったからなんだが。


しかも一般的には中国様は楽観的、外部の第三者は悲観的というのが立ち位置としては通例なんだが、このエネルギー問題に関しては中国様の内部にも悲観論が存在する点がちと特徴的なような気がする。以下、それぞれのマトリックスごとで整理してみようと思う。

短期 中長期
楽観的 パターンI パターンIII
悲観的 パターンII パターンIV

パターンI:短期・楽観

現状、頭がおかしい人じゃなければこの位置には立てない。電力不足も言われてるし、今現在ダメじゃんというのはまあ共通した認識なんだろうな。まあ、斜め上の発言はちらほら見かけるが。


⇒広東エネルギー不足:石油業界紙「悪いのは日本と韓国」 2006/01/20(金) 00:08:01 [中国情報局]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0120&f=business_0120_001.shtml

中国石油化工集団公司(シノペック)が管理するインターネットサイトは、広東省で深刻化しているエネルギー不足に関連して、「早々とエネルギーの買占めをした日本と韓国が悪い」などとする文書を19日付で掲載した。

パターンII:短期・悲観

これは基本的には外部の視点だと思うんだが、珍しく中国様も悲観的な意見を述べている(ただし、中長期的には状況は改善するという楽観的な態度になるんだが)。


例えば『中国:「エネルギー不足は経済成長の不安定要素」、国家発展改革委・副局長 - nikkeibp.jp』とかってのは短期的には悲観的な立ち位置に分類していいんじゃないかと思ったりする。ただし、中長期的には安定するって言ってんだけどね。

パターンIII:中長期・楽観

基本的には中国様はこのスタンスを取っていると思われる。根拠としては以下のような点が挙げられているが、それって将来にわたっても維持可能な前提なのか?と突っ込みたくはなる。

中国のエネルギー生産量は世界2位である
ただし消費量も世界2位。対GDP規模で見て使いすぎだろお前らと小一時間。どれくらい使いすぎかというと「中国科学院の「持続可能な発展戦略に関する研究グループ」のグループ長・首席科学者・牛文元氏の計算によると、2003年の中国国民総生産(GNP)は世界の総生産の4%に過ぎないにもかかわらず、世界3分の1の石炭、鋼鉄、セメントを消費してしまったという(大紀元時報−日本 "中国:エネルギー大量消費、石油危機再発の可能性")」なんて話がある。
中国は過去安定して高いエネルギー生産量を拡大してきている
『国家発展・改革委員会(国家発改委)の張国宝・副主任は、「78年の改革開放以降、平均して毎年9.4%の割合でエネルギー生産が発展してきた。これは世界の奇跡だ」と述べた。』(「中国のエネルギー戦略は効率的」、原発を4%へ 2005/09/13(火) 23:16:00 (中国情報局))
中国のエネルギーの海外依存度はわずか6%
発改委:「中国の海外エネルギー依存度はわずか6%」 2005/09/12(月) 12:21:59 (中国情報局))。ただし、原油自給率は60%程度であり、今後原油の需要はますます伸びていくことが確実視されているので、自給率は下がっていくだろというツッコミをしたくなる。


ただし、手放しで大丈夫と言っている感じはしない。いろいろな手を打つから大丈夫だよと言っているという印象を受ける。この大方針は中国共産党の第16期中央委員会第五回全体会議(「五中全会」)において発表されたコミュニケ「中国共産党十六届五中全会公報」で強調された、「持続可能な安定成長」というスローガンなんだろう。


このコミュニケでは、「持続可能な安定成長」に向けて、特に資源の利用効率を高めることが今後中国として重点的に取組むべき分野であることが強調されている。これは国家発展・改革委員会(発改委)がちょっと前から打ち出していた「循環経済社会」というコンセプトが、国策として取り入れられたってことなんだろう。


で、この方針を受けての打ち手をずらずらと列挙していってみよう。

省エネルギーに関する数値目標を明示
2010年にGDP成長1ポイントあたりのエネルギー消費量を2005年比で20%削減を目標とするらしい。で、それに関連して「単位GDPのエネルギー消費指標を06年から発表 2005/12/18(日) 12:17:17 (中国情報局)」ということらしい。
省エネのいろんな施策打つよ!
発改委:エネルギー節約7大プロジェクトを始動 2005/06/27(月) 19:16:05 (中国情報局)』ということで、「石油の節約と代替推進」「地域的な電力政策」「余熱利用」「政府機関のエネルギー・資源節約」「建築のエネルギー・資源節約」「エコ照明の採用」などを柱とするもので、5年以内に2.4億トンの石炭消費減を目指すそうだ。
基本的には石炭中心で行くよ
中国共産党中央は18日、「『第11次五カ年企画(2006−10年)』に関する意見」の中で、中国のエネルギー戦略について言及し、国内に立脚した、石炭を基礎とするエネルギー供給体系を構築する』そうだ。(共産党:石炭ベースの五カ年エネルギー戦略を発表 2005/10/19(水) 22:27:59 (中国情報局)
海上の油田・ガス田を開発するよ!
例えばこんな記事。海洋油田、ガス田の生産量増でエネルギー不足改善 2005/09/06(火) 19:36:00 (中国情報局)
原油の備蓄も増やすよ
中国:2010年まで石油備蓄は年平均9億〜10億トン増加 - nikkeibp.jp」ということらしいんだが、短期的には原油価格が高騰している中でこんな量の備蓄をすることは難しいだろうなあと。
原発増やすよ!
2020年までにエネルギー生産量の4%を原子力でまかなう計画らしい。例えばこんな記事が。『中国:今後15年で原発に3600億元以上を投入 2004/03/21(日) 20:54:15 (中国情報局)』。これによれば沿海地方を中心に28ヶ所の原発を造るって言うんだが、うーんなんか最近の炭鉱の事故とか考えると激しく不安。原発の開発計画なんかは「(JAIF) プレスリリース-2005年4月8日 世界の原子力発電開発の動向」なんかを見てもらえれば。
それ以外の発電も開発するよ!
風力発電太陽光発電、生物エネルギー発電など再生可能エネルギーの開発にも注力するよという話。
包括的なエネルギー基本法を策定するよ!
アメリカを参考としてエネルギー政策の包括的な基本法を作るらしいんだが、お前らは法律を作っても守る気が(ry(「エネルギー法」制定準備、米エネルギー法を参考 2005/10/23(日) 09:49:10 (中国情報局)


で、実際のところこれらの打ち手を着々と打っていけばなんとなく大丈夫なような気もしてきてしまったりする。省エネのポテンシャルは高いという論文なんかもあったりするし。


⇒中国のエネルギー潜在力(http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/695.pdf

中国の省エネルギー潜在力は転換部門では25%、最終消費部門では26%、一次エネルギー消費では26%、という計測結果が挙げられる。


ただ、当然の事ながらこれに対する外部の悲観的な突っ込みは多数存在する。

パターンIV:中長期・悲観

この悲観論はほぼ全て「原油足りねえだろ」の一言に尽きる。この問題は需要と供給の二つの視点がある。需要については数字は色々あるものの、まあ一貫して「原油消費はえらい勢いで増える」というのが共通した意見。供給側はもうちょっといろんな側面で語られている。以下、この記事が一番まとまってるぽいのでこの記事をベースに論点を列挙してみる。

⇒"中国:石油貯蔵が14年後に底をつく?"
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/08/html/d38058.html


  1. 原油需要が拡大し続ける
  2. 供給と需要の格差がどんどん広がる
  3. 石油輸入経路が単一すぎる問題
    • いま、中国の90%の石油輸入は海運に依存する、しかも大半の海運業務を外資系運輸会社に託している。海運輸入の重要ルートマラッカ海峡は、アメリカの最重要の戦略通路の1つ、万一戦争や外交紛争などの問題が起こると、中国の石油運輸安全が牽制される局面となる。
  4. 原油供給は他国に牽制されている
  5. リスク対応力は不足
    • 国際原油価格が高騰の現在、現市場で推算すれば、国際原油価格が1ドル上昇することで、中国は6億ドルの外貨支出増となり、大きな負担となる。


この辺の問題は極東ブログあたりも参照してもらうということで。


で、結論としてはよく分からんが、凄くダメそうということでFA。