市場予測なんてうまくいかないに10000ペリカ
TechCrunch Japanese アーカイブ » CAPS、「少数者の英知」を借りて株価を予想
⇒ http://jp.techcrunch.com/archives/caps-takes-wisdom-of-the-few-to-stock-picking/
「群集の英知(Wisdom of Crowds)」をスポーツの結果予測でやったら、一部すげえ的中率の高い一群がいたらしく、彼らの予測だけを抽出したら全体よりはるかに高い的中率を示したらしい。で、これを株式市場に当てはめれば、精度のいい市場予測が出来るんじゃないか?という二匹めのドジョウを追いかけるというプロジェクト。でも、これって絶対にうまくいかないと思う。
「的中率の高い一群」なんて偶然の産物にしか過ぎない
このプロジェクトでは以下のような方法で「英知を持った少数者」を探り出そうとしているが、無駄だ。
>
| | ∩___∩ | | ノ _, ,_ ヽ (( | プラプラ / ● ● | (=) | ( _●_) ミ _ (⌒) J )) 彡、 |∪| ノ ⊂⌒ヽ / ヽノ ヽ /⌒つ \ ヽ / ヽ / \_,,ノ |、_ノ
市場はランダムに動くとしよう。すると個別銘柄がS&P(でもなんでもよくて、ようは平均的な市場の動きを示すインデックスならなんでもいい)を上回るか下回るかはまったく同等の確率で起きる。つまりコインを投げて表・裏を当てることと一緒だ。
で、これを7回連続当てることはどの程度難しいか。計算は簡単。1/2^7=1/128≒0.78%。こうみると「いや結構難しいじゃん」と思うかもしれない。しかし、ポイントは参加者が多ければどうなるかということだ。
例えば1000人がこのコンテストに参加したとしよう。全員がランダムに結果予測をしたとしても、7.8人程度はまったく何の根拠もなく生き残ってしまう。たとえこの試行回数を10回にしても、1000人いれば一人くらいは的中させる人が出てくる可能性がある。
話はちょっとそれるが、昔この手を悪用した詐欺が実際起こった。最初に2000人くらいの顧客に対して、半分には「来週株価は上がる」、もう半分には「下がる」というDMを送る。当たったほうの1000人に対して、また半分の500人には「上がる」、もう半分には「下がる」と送る。これを5週間ほど繰り返して、最後に残った数十人に「この的中率の高い予測を毎週5000ドルで買いませんか?」と持ちかけたって話。これも対象とする人数が多ければ、非常に高い確率で「全問正解」が存在するっていう話だ。
話を戻すと、では、この7回連続市場の動きを的中させた人が次にどうなるかを当てる確率はどの程度か?結局それは1/2の確率でしかない。つまり市場がランダムだと仮定すれば、この手の予測に関して過去の実績というのはまったく意味がない代物でしかない。
じゃあ、もっと大人数で予測をやったみたらどうよ?という反論があるかもね。
それを日々やっているのが先物市場だ。先物市場を凌駕するほど参加者や資金が集められるのであればたいしたもんだが、そうなったらそれは既に新たな「先物市場」が出来たということに過ぎない。
結局、株とスポーツを同じと考えることが間違ってる
スポーツは必ずしも実力が均衡しているゲームではないし、結果を予想するための情報にも様々な種類がある。これらの情報を分析して予測することに対しての巧拙は当然存在する(じゃないと監督とかコーチとかって存在する意味ないでしょ)。
しかし株は違う。株式市場のランダムウオークについては数多くの実証研究がすでに出ている。このような市場で偶然ある一定期間正しい予想をしたとしても、それが永続的に続くことは理論上ありえない*1。
で、この人は「取らぬ狸の皮算用」で悩んでいるわけだが
>
しかし、ひとつ気になるのは、 PicksPal とは違って CAPS で非常に高い評価を得ているエキスパートユーザーは、自分が株の推薦に影響を与えていることに気付いてしまうことだ。単に本人がその事実を知っただけでも予想内容に影響が出る恐れがあり、システム全体を破壊してしまうかもしれない (これは「群集の英知」の理論で最初に「群集対エキスパート」の比較が行われたときの背景となった考え方だ)。もし、そういうことが起こるようだと、CAPSは専門家が自分の金銭的利害を考慮して―あるいは似たような理由で―特定の株を推薦する非効率なシステムと変わらなくなってしまう。
(強調、ryozo18)
それなんて市場操作?
ま、市場のランダムウオーク仮説をさらに補強するケースが一つ増えることに祝意を表しておきます。じゃ、わたし眠いので、これで。
*1:ただし、長期投資によって債券市場よりも平均的に高いパフォーマンスをだすことは十分可能。でもこれはここで扱っている個別銘柄の株取引とはまったく別の話