義務教育改革を煽る経済団体


あまりにあまりなアンケート結果があったので突っ込んどく。


「義務教育に関するアンケート」の調査結果
義務教育について「改革の必要性がある」が8割を超える(経済広報センター)
⇒ http://www.kkc.or.jp/release/2006/rel1023.html


必死だなとか笑ってられる状況じゃないかもしれない。



回答者属性が偏ってないか?(p.3)


この調査の回答者属性をまず見ておこう。


そもそもこの調査は無作為抽出で調べたものではない。財団法人経済広報センターに登録している社会広聴会員というモニター会員である。この時点ですでになにか臭さを感じる。


さて、回答者の年代別の分布を見てみよう。

29歳以下 30代 40代 50代 60歳以上
327 598 1,129 835 1,148
8.1% 14.8% 28.0% 20.7% 28.4%


ええっと、これって義務教育についてのアンケートですよね?義務教育課程の子供を持っている人に限る必要は全く無いし、国全体で考えるべき問題だとも思うんですが、そうであれば日本全体の年齢構成を反映させたサンプリングしないと意見に偏りがでませんか?


ちなみに総務省統計局の人口推計と比較してみる。ただし「29歳以下」の区分は総務省の統計の「20代」を比較対象としている。さらに「60歳以上」の区分は総務省の統計の「60歳〜79歳」を比較対象にしている。なので総務省統計で算出した比率では19歳以下と80歳以上の人口を除いたものを全体としている。

年代 29歳以下 30代 40代 50代 60歳以上
このアンケート 8.1% 14.8% 28.0% 20.7% 28.4%
総務省統計 16.1% 19.5% 16.1% 19.7% 28.6%
ギャップ ▲8.0 ▲4.7 +11.9 +1.0 +0.2


40代がやけに重くサンプルに含まれていることがわかる。ただ、この世代は子供が義務教育課程にいる可能性も高く、この手の調査への関心が高い世代ということも考えられる。というわけで、次はこの調査のサンプルで義務教育を受けている子供がいる比率を見てみる。

義務教育を受けている子供
サンプル数 954 3,083
比率 23.6% 76.4%


ええっと、もう一度確認しますが、なんの調査でしたっけ?*1

義務教育改革が必要という回答は確かに高いが、なにを改善すべきかの優先順位が全く分からない(pp.4-6)


「現在の義務教育について、改革の必要性があると思いますか(択一)」という設問に対して、子供の有無に関わらず8割強の人が「ある」と回答している。では、どのような改革をすればいいのだろうか。何が義務教育の問題だと思っているんだろうかという疑問は当然出る。


次の設問はこうなっている。「義務教育の改善や充実のためには、どのようなことを重視すべきだと思いますか(複数回答)」。しかし驚いたことにこの設問の回答には一切数字が現れないのだ



これでは誰が何をどういう優先順位で改善して欲しいと思っているのか全く分からない。これでは、まず大前提となる「現在の義務教育の何が問題だと思っているのか」という点や、「現在進められている教育改革諮問会議の方向性をどう思っているのか」といった点に対して全くなんの示唆も得られない。何のための調査なのか意味がわからなくなる。とにかく「義務教育改革は国民の総意です」といいたいだけちゃうんかと(ry

義務教育課程の子供の有無を無視した全体集計がひどい(pp.9-10)


『公立小中学校による情報発信について』という設問項目がある。このなかに「学校による情報発信(学校だより・ホームページなど)が義務化されていますが、このような情報発信に触れたことがありますか(先生個人による情報発信は除く。例:学級通信)。(複数回答)」という設問があった。


この設問の回答結果に対するリード文はこうなっている。


−「学校が発信した情報に触れたことはない」が約3割


ええ、高いなあと思うかもしれない。当たり前だ。この回答結果は義務教育課程にいる子供の有無に関わらない全体の回答結果だからだ。次のページに子供の有無による回答結果が掲載されている。



これを見ると、子供がいる家庭では8割以上が「学校だよりを見たことがある」と回答している。そして「学校が発信した情報に触れたことはない」という回答は「子ども有:男性」で10%、「子ども有:女性」ではわずか3%に過ぎない。情報に触れたことが無い人とは、ようは子供がいない人に集中しているだけだ。しかも「触れたことがない」という回答の比率も高々40%程度に過ぎない。ようは子供がいない人でも半数以上の人は学校が発信している情報に触れているのだ。


このように回答者の属性に大きく左右されるような設問は、そもそもセグメント別に結果を提示するのが当たり前であり、全体で集計した結果は全く意味をなさないと僕は思う。この手の恣意的な情報提供は慎むべきだ。

で、この調査をやった財団法人 経済広報センターってさあ


財団法人経済広報センター/ホームページ
http://www.kkc.or.jp/index.html


このサイトにある「2006年度事業計画(PDFファイル)」のp.2にこう書いてある。

【国内広報の主要事業】


1.経済界の主張を実現するための事業


日本経団連が提言する重要政策テーマについて、日本経団連と連携し、広報活動を積極的に展開する。


会長は当然、日本経団連会長の御手洗氏だ。


結局この調査の意図するところは次の4点なんだろう。

>


ようは学校の評価・運営に外部の第三者がもっと手を突っ込めるようにしたいってことなんだなと。第三者を含めた評価制度を導入し、その評価結果に基づいた予算の傾斜配分や生徒の獲得といった学校間の競争を起こさせることが最終的な目標なんだろう。


義務教育ってなんなんだろうね。

*1:ついでに言えば義務教育を受けている子供の有無と年代のクロス表も同時に示すべきだと思う