「要は、勇気がないんでしょ?」で始まる金融政策


追記:はてブにて「かわいいおにゃのこの挿絵がない」と言われたのでいくつか追加してみました。こうですか?わかりません><*1




※書き手はデフレ下の福井日銀総裁




ちょっと昔の話。今よりも僕はずっとずっと言い訳をするのが好きで、理屈を説明するのが好きだったんです。


でまぁ、当時も今と変わらず金融政策ののりしろがないんで、武藤副総裁と飲みながら「金融政策ののりしろがない、だから構造改革ができないんだ」と文句言ってたのです。


金融政策決定会合で。


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したらまた、この副総裁が「じゃあ、わかった」と言うのです。「今から国会に行こう」と。


根回しなんかしたことないオレは焦りました。「いや、ちょっと待って」とあわてます。


でも副総裁は、少し遠くで飲んでいる小沢とマスコミを指さし、「あそこ行って同盟を組もうぜ」と言い、席を立ちます。


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オレは「いや、向こうも迷惑だし」とか「さすがにうざいっしょ」とか言って止めます。


副総裁は「詰められたら独立性を盾に任期切れで逃げればいいんだよ」と言ってましたが、オレが動こうとしないので行くのをやめました。


「じゃあ、小沢と組まずに、麻生閣下と組むか?」と副総裁は言います。


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「逆にそっちの方が難易度高いだろ」とオレは顔をしかめます。


「でものりしろがないんだろ? だったら作るしかないだろ」と副総裁は口調を強めます。


「そうだけど、もっと普通に金利正常化を発表したいっていうか」とオレ。


「なに、正常化って?」


「できれば短期コールレートが2%とか、実は資産価格は明らかにバブルだからインフレ懸念がとか、そういう…」とハッキリ言えない自分。


「じゃあ、オレが今からオペしてきて、それで金利を2%にしたらいいか? それも企画局の直電だよな」という副総裁。


「それは…、だけど、ほら、お前もこの前言ってたじゃん。GDPデフレータがマイナスの時期にあがってくる指標って実質デフレの相が多いとか」


「は?」


「その…」


「…デフレの相じゃねぇよ。『いいデフレ』だよ」


「あ、そうだったね。…でもオレ、『いいデフレ』、少し苦手だし。そこまでしてのりしろが欲しいってわけでもないし…」


副総裁はオレの顔をじっと見つめながら、一言、


「だせぇ」


と言いました。




ごちゃごちゃ言ってるけど、勇気がないだけじゃん




彼は言います。


言い訳をして、さも「独立性なんてないんだ、だからしょうがないんだ」って言うけれど、


勇気がない自分を必死になって正当化してるだけじゃん、と。


金利を正常化する勇気もないやつが、のりしろがないとか言うんじゃない。


どうせCPIがプラスになれば「コアコアCPIがプラスじゃないし…」って言うし、


G7につれていけば「ああいう国際協調は苦手だし、為替介入も出来そうにない」とか言うだろうし、


中国のおかしい元高を狙えって言えば「いや、中国は固定相場制で義に背くし」って何かにつけて言い訳するんだろ?


だったら「自分には日本の経済を回復させる勇気がないんです」って素直に認めて文句言うんじゃねぇよ。


そっちの方が、よっぽど何かってときに力になりたいってと思うし、


つーか、できない理由並べて、今の自分を否定させずに、わかってもらおうとするその魂胆がだせぇ、と。




あれは恥ずかしかったなー。すげぇ。恥ずかしかった。


その場は言い訳もできず笑ってごまかしたけど、家に帰ったら副総裁の顔とセリフが思い浮かんで、


総裁室の中で「でもさ、でもさ」と必死に言い訳考えてた。


オレにはオレの事情があるんだ、しょうがねぇじゃんかよって。翁の「ゼロ金利と日本経済」読みながら(笑)


ひとしきり考えたら、そんな自分を「だせぇ」って思った。


そういうところから、どういう行動を取り始めるかは人それぞれで、


「いいさ、どうせオレなんか」と、うずもれてしまうこともできたんですが、


ただ、「ダサくはなりたくない」ってことだけは強く思ってて。


変わりたいとか、そんなたいそうなことじゃないんだけど、かっこ悪いのはイヤだった。


あの頃に比べたら、言い訳を言う量はだいぶ減ったかなーと思う。




「デフレ!」と言われると、カッとなって「ホントにそうか?」と言いたくなる




だから何かにつけてリフレ主張する人を見ると「ネットでしか支持されてないからやだなーって思ってる部分があるんだろな」って思ったりします。


でも、自分もそうだったから「だせぇ」とはあまり思わずに、どうしたら勇気が持てるようになるか、力になれないかって考えたりします。


副総裁がやったような荒療治がいいときもあるだろし、


任期切れ会見であっさりデフレ基調や金融政策の失敗を肯定した方がいいときもあると思うし。


正直なところ、


言い訳したり、あら探しをしたりしながら今の自分を守って、それで任期一杯まで居座ってもいいと思うんです。


イヤミとかそういうんじゃなくて、それもひとつの生き方だと思うし。


ただ個人的には、日銀の独立性はなんとしてでも手に入れるべきと思ってるのと、


勇気が出ないっていう本音をカモフラージュしながら何十年も言い訳をしつづけるのは、考えただけでげんなりするので、


できない理由を考える暇があるなら、できることだけでもやってしまった方がいいと思うし、そっちをおすすめしたいんです。




「リフレができない総裁もいる」という意見は、とてもよくわかるんだけど、最近はわからないフリしてる。


ホントにそうか?って思う。


なぁなぁ、ホントにできないか? できない理由って具体的になんだ。それに対してこれまで行った対応策はなんだ。


意外と具体的には言えなくて「なんとなくできない気がしてる」だけのときってあるし、


突き詰めてみると、「それって勇気を出して一歩踏み出せば解決するんじゃん?」ってことが案外あったりすると思ってるんです。




でもやらね




インスパイヤ元:

「要は、勇気がないんでしょ?」で始まる太平洋戦争 - ARTIFACT@ハテナ系
「要は、勇気がないんでしょ?」で飛び込む赤きサイクロン - welchmanの日記
「要は、勇気がないんでしょ?」で始まる天下三分の計
要は、勇気がないんでしょ? - Attribute=51

*1:「atawa あれ、かわいい女の子の挿絵がないよ!」