逆問題の考え方 結果から原因を探る数学 (ブルーバックス)


結果から原因を探る数学『逆問題の考え方』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」経由。


出版社の説明から一部抜粋。

「与えられた原因から起こり得るべき結果を予想する」のが、通常の問題で「順問題」

観測結果に基づいて現象の原因を決定するという逆問題


まあ、そういうこった。


特に面白かったのは「第7章 逆問題のジレンマ」で紹介された「正則化法」。これはちゃんと理解したい概念だなあ。これって社会科学の世界でも応用可能な気がするが、どうなんだろう。


「逆問題」「正則化」あたりでググると最小二乗法へ正則化を適用したlasso回帰とかRidge回帰とか出てくる。社会科学の分野では数値の精度もサンプリングも首を傾げたくなるような怪しげな回帰分析が大量に生産されているわけだが、このあたりの手法を適用したらかなりこの状況が改善されたりするんじゃなかろうか。




いわゆる「マクロ経済モデル」なんかは、精度がいいとはいえない各種経済指標を連立らしき方程式にぶっこんで経済成長率予想などを導出したりするわけだが、モデルによっては経済指標の変動にあまりに鋭敏だったりする。というか外れる。


なんかしらのイベントが起きたら、そのイベントがポジティブでもネガティブでも(戦争でもいいし、新しい大規模油田が見つかったとかでもいいし、銀行救済の合意が成立したでもいい)、とにかくなんかイベントが起きて経済指標にある種の非連続な動きが出ると、とたんにモデルの予測が破綻するんだよねえ。このあたりの悲惨な状況は「シグナル&ノイズ」でもさんざんネタにされてたけど、ほんと予測と呼べるようなシロモノじゃない。このへんの制御に正則化法みたいな手法が適用できたりするといいなあと。


ただ日本の場合、「消費税増税の影響は軽微」とか「消費税増税社会保障に対する将来不安が解消するから消費は増える」などといった理屈もなんもあったもんじゃないポジショントークが「エコノミストの予想」としてメディアに掲載されてしまう状態なわけで、正則化だなんだ以前の問題ではあるんだが。