虚業: 小池隆一が語る企業の闇と政治の呪縛


昨今うるさくなったコンプライアンスとか反社関連でふと目に止まったので。図書館で借りました。


高度成長期後半からバブル崩壊を経て、つい最近までの「総会屋」の大物を追いかけたルポ。結構な実名(企業、個人とも)が出てきてて、ひゃあと声が出たりしつつ読了。


この本の主人公は、株主総会を「シャンシャン」に仕切るために企業から依頼されてあらゆる種類の根回しをする「与党総会屋」を生業としてきた方らしく、「伝説の総会屋」と呼ばれていたそうだ。出てくるエピソードも生々しく、ああ、あの事件の裏側ってこうなってたのねーと面白く読んだ。半沢直樹の世界は別にフィクションでもないよねー。


私見ではあるが、金融機関みたいな組織で出世した人なんてのは、「コンプラ違反が見つかった場合、組織は守ってくれない時期は、運良く見つからなかった人たち」で、「出世することで組織に自分を守らせることができるようになった人たち」だと思っている。その手の組織でのキャリアなんて運の問題だよね、と。


さてこの本、基本時系列に沿って書かれているはずなんだが、登場人物の登場のさせ方が下手すぎて読みにくい本になっていてすごく残念。この本の主人公は「若くして総会屋業界のトップに上り詰めた人物」という書かれ方をされているのだが、章が改まるたびに新たな「実はこいつも同じくらい大物でしかも主人公より来歴が古い」みたいなキャラがバシバシ出てくるという。読みながら「ないわーw」とついツッコミをしたくなる。あと登場人物の内面を著者が推測する際の筆致がちょっと自己陶酔的で読みにくい。内容が興味深いだけに、淡々と事実ベースを積み重ねる文体で読みたかったです。


虚業: 小池隆一が語る企業の闇と政治の呪縛

虚業: 小池隆一が語る企業の闇と政治の呪縛