ニートの定義とその増減傾向


下で「そもそもニートをどう定義するかによって「脱却」の意味合いも変わってくる」と書いたけど、それに関する記事ハケーン。
働く意欲のない「ニート」は10年前から増えていない 本田由紀さん 東京大学大学院情報学環助教授


今年の3月に内閣府が発表した「青少年の就労に関する研究会」(委員長=玄田有史東京大学助教授)の中間報告で、職探しも進学も就職訓練もしていない若年無業者(15〜34歳)、いわゆる「ニート」が全国で約85万人に達するという推計が発表された。で、この数字は10年前は約67万人だったが、10年で約18万人も増加したとしてかなり大きく報道された。


この推計の元となるデータは総務省が5年ごとに実施している「就業構造基本調査」を特別集計したものだそうで、ここでのニートの定義は以下のようなものになっているそうだ。


まず内閣府の調査では無業の人を3つの類型に以下のように分けている。

  1. 「求職型」:求職活動をしている人、いわゆる失業者
  2. 「非求職型」:求職活動はしていないけれども働きたいという希望がある人
  3. 「非希望型」働きたいという希望すら持っていない人


このうちの2と3をあわせたものを内閣府では「ニート」と定義しているらしい。


だけど、一般的な語感としての「ニート」って3の「非希望型」を指すんじゃね?で、下のグラフを見ると、この「非希望型」はここ10年で見るとほぼ横ばいじゃん。で、増えてるのは2の「非求職型」だと(1の「求職型」も増えてるけど、内閣府の「ニート」の範囲で考えれば2と3を問題にしてる)。



つまりだ、

ニート」が約85万人というのは、(2)「非求職型」と(3)「非希望型」を足した数字です。その中で増加傾向にあるのは、希望しているが仕事を探すところまではいっていない(2)「非求職型」なのです。「ニート」は「働く意欲のない若者」の問題と見なされがちですけれども、「働く意欲はあるがそれが実現していない若者」のほうが増えてきているのです。このような動向は、どう見てもディマンドサイド(労働需要側)の変化、労働市場の問題と切り離せないと思います。少なくとも10年前から見る限り、(1)「求職型」と(2)「非求職型」がこれだけ増えているのですから。(3)「非希望型」の人は従来から一定数存在しており、最近とくに増えているわけでは決してないのです。


昨今の「ニート」についての議論や世論にやや疑問を感じるのは、若い人の側(サプライサイド)の問題として語られ過ぎているのではないかということですね。もっと広い視点に立って、ディマンドサイドからも捉えることが必要でしょう。「ニート」本人の意識とか、コミュニケーション能力、学力、働く意欲などという視点から見るだけでは、実態からずれてしまうのではないでしょうか。


ということなんだろね。この内閣府の調査ってかなりミスリードな「ニート」の定義してんじゃね?と思うなあ。委員長が玄田先生なのに、なんでこんな定義になってるんだろう。ニート層を増やしたいという意思を感じてしまうなあ。


あと、気になったのは「ニート」と「引きこもり」の包含関係。内閣府の定義でいけば、「引きこもり」は内閣府の定義するところのニート」のうちのごく一部に過ぎないような気がする。でも、下の記事での「ニート」と「引きこもり」は、かなりの部分で重なった集団として扱われている印象を受ける。この辺をはっきりさせることが必要なんじゃまいか。


この記事でも、ニートの中でも特に引きこもり系に分類されると思われる層の原因を推測したりはしている(この記事では「負の連鎖」と言っている。下の『履歴図』もある種の「負の連鎖」を可視化したものなのかもね)。でも3の集団に関しては、昔から一定数いる層だと思うし、あんまり国がどうこう言う問題でもないと思う。