ネット企業の成功・失敗が国力を決めるわけではない件について
なんかはてなブクマで妙に上位にいたので読んでみた。
⇒日本のネットベンチャーが技術革新よりも 「ネット財閥」 をめざす理由 - モジログ
前半部分の「日本のネット企業の投資は、技術革新にではなく事業半径を広げるために使われており、その志向は『財閥的なもの』をよしとする日本的風土に起因するのではないか」という指摘はあーそーかもね、と思った。
ただ後半の部分に関しては、なんか勘違い杞憂だろと思える部分が多々あったので、ちょっと突っ込んでみる。引用部分は上記Blogより抜粋。
- 設問
- 日本の投資家は日本のグランドデザインを意識して投資を行っているか?
日本はこれに対して、車や電機メーカーなどの社内では技術革新が 行なわれているが、社会全体としては、「技術革新に資金を突っ込む」 というコンセンサス(合意・了解)があまりできていない気がする。 資金運用のパフォーマンスは気にするものの、自国から技術革新を 生み出すことの重要性があまり理解されていない。
- 回答
- 今までの企業の資金調達は間接金融が主体だったので、個人個人が「技術革新に資金を突っ込む」という意識を持たなくとも銀行に金さえ預ければ銀行からの融資という形で企業の技術投資へのファイナンスは出来ていた。で、過去について言えば、金融機関と官庁(大蔵省とか通産省とか)は、大変強い技術革新への投資意欲を持っていたと言える。たしかに個々人のレベルでは技術革新に投資しなきゃという意識は持っていなかったかもしれないが、国全体としては相当技術投資を行ってきた。今は大企業は直接市場から資金を調達する方向にシフトしている(ついでにいえば自己資金もたんまり持ってる)から、一見すると技術革新への社会全体の投資意欲は落ちているように見えるのかもね。蛇足だが製造業企業とネット企業の時価総額合計を比べてみることをお勧めしたい。ただし、ネット系の技術革新への投資額が少ないのではないかという意見はそうかもしれない。
- 設問
- 日本の技術投資戦略は間違っているのではないか?この技術投資戦略の間違いは日本の国力を落としてしまうのではないか?
いまはあらゆる分野において、世界的な競争が起こっている。 日本の若者はみんなiPodを持ち、Googleで検索し、アマゾンで 本を買っているような状態だ。 ずっとこの調子で大丈夫なのか。 日本は今後も「凡庸なものに平たく投資する」方式でやっていて、 いいのだろうか。
- 回答
- ネット分野での先端技術への投資は確かに少ない可能性はあるわね。が、それ以外の家電分野や自動車産業や精密機器などなどなどには十分世界レベルの投資が行われているし、こういった企業は業績もいい。アメリカの国民の多くはPanasonicのテレビを買い、トヨタ車に乗り、キヤノンのプリンタを使っている。どっちが金額ベースで大きいかは自明。全ての産業で世界の覇権を握れる国など存在しないだろうなと。日本は日本の得意分野に技術投資を集中させているといえない理由はない。
- 設問
- 日本の「技術経営」は劣っているか?
日本には、決して技術がないわけではない。 優秀な技術者はたくさんいるはずだ。 しかし、それがビジネスや投資と結びついておらず、 シナジー(相乗効果)を起こしていないのではないか。
- 回答
- つ松下の業績および研究開発投資額
- 設問
- 日本流ネット財閥志向に偏った投資は日本の国力を落とすのか?
ライブドアや楽天の動きは、旧来の日本的経営と異質な部分もあるが、 むしろそれ以上に「日本の縮図」でもあり、いろいろな教訓を含んでいる。 つまり、ライブドアや楽天が引き起こした動きは、日本にとって、 まったく「他人事ではない」。 日本はやはり、買収なんかしている場合ではない。 この調子では、日本は逆に「買収」されてしまうかもしれない。 つまりライブドアや楽天も、TBSや阪神も、両方とも「日本の姿」 だと思うのだ。
- 回答
- 別に国力は落ちないよ。楽天がTBSを買収しようが、その投資は国内で資金が循環してるだけで海外に流出してないから。逆に楽天とかを買収してくれる海外投資家がいたらありがたく拝受すべきでしょ。数千億円単位の対内投資をしてくれる海外投資家なんて御の字もいいとこですよ。
まあ、そうはいってもGoogleやiPodやAmazonのおかげで、新聞とかテレビとかレコード会社とか本屋といった産業の収益性は落ちるだろうけど。ただそれと国力を直接結びつけるのは無理があるなと。
さらに好意的に言えば、こういう日本的安全志向の投資行動の投資効率が悪いから現在の日本の低成長がもたらされてるともいえなくはないと考える余地があるかもしれない可能性も否定できないという人もいないでもないかな(でもその前にデフレどーにかしろや、ゴルァ!>日銀、財務省)。