日本のアンチマネーロンダリングは難しい
⇒不自然な株売買監視、証券会社に義務付け…6証取方針 : 経済ニュース : 経済・マネー : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20051213it06.htm?from=top
これはネット取引などでの価格操作を取り締まりの対象とするらしいが、これを手作業というか人力で判断するのは難しい。さらにリアルタイムでアラーム出せという話になるとほぼ不可能だろう。
アメリカではテロ後に出来たPatoriot Actの一環で、Anti Money Laundering ACTが出来たせいで、取引のトランザクションをとりあえず全部スキャンしてパターンマッチングする類のアンチマネーロンダリング対策ソフトが出回っているが、日本ではまだ採用したところがあるとはあまり聞かない。こないだジェトロニクスが地銀だか信金向けのサービスをプレスリリースしていたようだが、詳細は知らん。
⇒ジェトロニクス−プレス
"ダイヤモンドコンピュータサービス運営のSWIFT共同型サービスにアンチ・マネーロンダリング・ソリューションを提供"
https://jp.getronics.com/index.asp?contentID=454
一部銀行では海外送金がテロ組織とかに逝ったりしてないかをチェックするためにこの手のソフトを入れているところもあるようだが、それらのソフトはSWIFTを介する取引を対象としているようで、国内の疑わしい取引をきちんとチェックする体系的・機械的な仕組みはあまりないと思う。上記ジェトロニクスのサービスもこの類だと思うが確信はない。
一応日本では金融庁の特定金融情報室がマネーロンダリングの対策窓口となっている。
⇒特定金融情報室
http://www.fsa.go.jp/fiu/fiu_menu.html
ただし、当然の事ながら警察とか公安とか外務省とか内閣調査室とかも絡む話であって、その辺の細かい仕組みがどうなっているかは知らないし、あまり知りたくもない。
ただ、この金融庁の特定金融情報室には銀行や証券会社、保険会社なんかの金融機関から「疑わしい取引」の情報があがってきている。ま、ついこないだまで提出様式がフロッピーディスクだったというのはご愛嬌として、この届出が2004年度で約9万件。ほとんどは銀行(約8万件)に集中している。ちなみに日本郵政公社からの届け出が約3,000件強というのは笑えない冗談だが。
で、日本でなぜアンチマネーロンダリング対策が難しいかというと、そもそも日本では口座の名寄せがあまりにも進んでいないということがある。日本の金融機関の口座管理は基本的には支店単位で行ってきた経緯がある。支店が違えば同じ銀行でも口座を開くことは比較的簡単だった。現在では口座開設とか大量の現金取引などの際には免許証等の本人確認書類による本人確認が義務付けられてはいるが、まあそれでもやろうと思えば複数口座の開設は可能だ(ちなみに郵送で口座開設をやったばあい、この本人確認書類はコピーでも可だったはずで、ザルじゃんと突っ込まれていた。今どうなってるかはよく知らないが)。これらの口座間であれやこれやすればマネーロンダリングが出来てしまうこともある。
この名寄せが難しい原因のもう一つは日本にはアメリカの社会保障番号のような統一的な国民IDがないことも関係している。これはあまり言うと地雷になるのでアレだが、アンチマネーロンダリング(ついでに言えば税補足、つまり脱税防止)の観点からすれば出来れば導入したほうがいい仕組みである。
とまあまとまりもなく書いているが、日本もぼちぼちこの手のマネーロンダリングとか不正な市場操作とか脱税とか諸々に性悪説で対処せざるを得なくなってくると思う。日本版SOX法もそのうち導入されるらしいし。その際に、人手を使ってこれをやるのは非効率極まりない、というか不可能だろ、実際。
なので、この手のアメリカなんかで実績のあるアンチマネーロンダリングソフトベンダーの株を買っとくといいことがあるかもしれないし、ないかもしれない。
いや別に銘柄推奨をしたいわけではなく、日本の金融システムってなんか色々と不備があって大変だね、という話をちょっと思いついたから書いたまでのことです。