金額面から見た東証とNYSEのシステム比較

⇒木走日記 - 抜本的改良は手遅れな東京証券取引所システム〜問われる技術立国日本の脆弱性
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060120/1137740301

 いかがでしょうか、このニューヨーク証券取引所東京証券取引所のシステム間の能力差でありますが、あきれてしまう格差ではありませんか。


 かたや毎時4680万件に対し、かたや一日の総量が900万件であります。


 ショックな話ですが、ニューヨーク証券取引所の4680万件は一時間あたりの能力であり一日あたりで換算すれば3億件を越えるであろう処理能力なのであります。


 世界最大の取引量を誇る取引所と単純比較しても東証システムには酷なのでありますが、より重要なのは、ニューヨーク証券取引所のシステムが「通常の取引量の約5倍を処理できるシステム能力を備えている」点です。


 このシステムの能力を東証システムで実現するためには、東証の過去取引量実績で言えば、売買注文4000万〜4500万件の処理能力を有しなければなりません。


 冒頭の記事で「1日当たり700万件以上に引き上げたい」などと東証社長が表明していましたが、いかに場当たり的な拡大策か理解いただけましたでしょうか。


 このニューヨークの過去最大量取引の5倍まで耐えられる能力が、決して過剰投資ではない適正な能力であることは、中期的将来展望を睨んでの計算された能力なのでありまして、「過去12年間に計20億ドル(約2300億円)以上の関連投資を行い、システムを増強してきた」賜物なのであります。


どうみても時代遅れです。本当にありがとうございました。


とはいえ、システムに回している金額ベースでの比較もしてみようと思う。


ニューヨーク証券取引所(以下、NYSE)の2004年度の年間収入は約10億ドル(1,076 mil$)で、そのうちシステム経費は1.4億ドル程度(139 mil$)。上記のエントリ中の読売新聞の記事を信じるとすれば、だいたい年間2億ドルの投資を行ってきたことになる。
(⇒http://www.nyse.com/pdfs/2004financials.pdf pp.24-25あたり参照)


一方、東証の営業収益は2004年度で約530億円、システム維持・運営費は約93億円。システム投資額ははっきりしないんだが、減価償却費とほぼ同水準と仮定したら約70億円くらいか。
(⇒http://www.tse.or.jp/ir/financials/data/index.html のExcelファイル参照)


これを表でまとめてみるとこんな感じ

NYSE 東証
売上高 10億ドル 530億円
システム経費 1.4億ドル 93億円
対売上高システム経費比率 12.8% 17.5%
システム投資 2億ドル 70億円
対売上高システム投資比率 20% 13.2%


簡単に言えば、東証は維持管理コストが高くて投資に回す金が少ないということ。一般の企業に比べるとそれでも高いシステム投資比率だったりするんだが(ま、情報処理産業なんだから当たり前っちゃあ当たり前なんだが)、常に後手後手で将来性のないシステム使ってて大変ですねというだけの話だ。また富士通か、ということで。


で、木走日記ではトランザクションの処理能力件数だけでなく、レスポンス・タイムも致命的に遅い点を指摘している。ようは全面的にリプレースしないとだめだよ、ということだ。