で、東証にシステムリプレース投資に回す金なんてあるのか?

東証の営業利益は2004年度で113億円。経常利益でも120億円あるんだからとっとと投資すりゃいいだろというだけの話だったりするんだが。ただ、この投資水準で全面的なリプレースを行うことは難しいかもしれない。まあ焼石に水かもしれないが、こないだのみずほ証券の誤発注による利益を基金として集めて、証券取引所のシステム投資なんかに使うという話もあって、これがだいたい200億円程度といわれていたりもするが。
⇒株誤発注の利益 全証券に返上呼びかけ : 金融ニュース : マネー・経済 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20060118mh03.htm


でももっとでかいキャッシュをどかんと手に入れる方法はないのか、という話になると、やっぱりIPOなんじゃね?というわけで上場に目が行くわけだが。仮に上場したらどうなるんだろうか?

上場した場合のシミュレーション

とはいえ、DCFとかでvaluationするのもめんどくさいので、ヘラクレスに上場している大阪証券取引所(以下、大証)の数字をベンチマークとして使う。


大証Yahoo!ファイナンス - 8697.j http://quote.yahoo.co.jp/q?s=8697.j&d=c&k=c3&z=m&h=on)を見ると、PERは約40(高すぎね?というツッコミは今は保留だ)。で、東証の一株あたり純利益は2,743円(平成18年3月期の中間決算より)。発行済株式総数が2,273,740株なので、単純に時価総額を計算すると約2,500億円。

(一株あたり純利益)×(株価収益率:PER)×(発行済株式総数)=(時価総額


まあ、発行済み株式のうち何割程度を売り出すのか知らないが、きりのいいところで40%とすれば、約1,000億円が調達できる。(゚д゚)ウマー かと思いきや、これは絵に描いた餅に過ぎない。

上場するには収入の1/4を手放さないといけない罠

山陰中央新報 - 東証株上場/ちょっと急ぎ過ぎでは
http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/106107033.html

 金融庁東証に対し、上場申請する前に、まず日々の取引や上場企業の決算処理に目を光らせる自主規制部門を企業としての組織から遮断する方法を工夫するよう指示した。


 しかし、東証は「株価操作やインサイダー取引が行われていないかどうかをチェックするには市場部門との密接な連携が望ましい」としてあくまで自主規制部門の分離・独立に消極的だ。この姿勢を反映、自主規制の具体策を検討するため東証が設けた外部有識者らの特別委員会も、海外の事例を参考に論点を整理する程度にとどまっている。証券取引所の上場には政府の承認が必要なため、このままでは上場計画の延期が避けられない見通しだ。


 東証が自らの株式上場を計画しているのは、設備投資や国際的な証券取引所の再編に乗りだすため、資金調達の手段拡大が狙いだ。ネット取引の普及もあり売買注文件数が急増。今春処理能力を約三割増やし一日当たり六百二十万件としたが、来春は九百万件まで増やす。このほか、緊急時のバックアップシステムなどの設備投資資金が必要という。そのためにも、収入の四分の一を稼ぐ上場審査など自主規制部門をみすみす手放したくないというのが本音だろう。


この自主規制部門とは、収益で言うとおそらく「上場関係収入」という項目にあたるんだろうが、これの収入が約110億円。さらにこれからもどんどん新規公開企業増やしていこうというときに、その収入を生み出す部門を切り離すのはまあ勘弁してくれという話だ。


で、委員会等設置会社にするから許してとお願いしているわけだが、これが通ったという話は聞かない。
東証 : 自主規制業務のあり方に関する特別委員会
http://www.tse.or.jp/about/tse/committee/index.html

当取引所は、急速に高まりつつある期待に応えて、より独立的かつ実効的に自主規制機能を発揮していくためには、委員会等設置会社のガバナンス・スタイルを採ることが適当であろうとの報告をいただいたところです。


しかも昨今のシステムトラブルによる不祥事続きだから、上場は当分先だろうなあ。ということでお金の面から見ても東証のシステムが全面的にリプレースされるのはまだまだ先の話と。これはもうだめかも分からんね。