インド経済は普通に将来性がありそうな件


「経済・産業レポートとマーケット情報:三菱東京UFJ銀行」で見つけたレポート2本。


インドの経済成長メカニズム(1)〜内需の拡大が支える高成長〜
⇒ http://www.bk.mufg.jp/report/ecorevi2006/review20060725.pdf


インドの経済成長メカニズム(2)〜工業部門の発展の可能性と課題〜
http://www.bk.mufg.jp/report/ecorevi2006/review20061011.pdf


これ読んで普通にインド大丈夫じゃん、と思った。



インドの経済成長は3つ(+1)の特徴がある


近年インドは年率7〜8%の経済成長が続いているらしいんだが、その要因は大きく次の3つ。

1.サービスセクターの伸びが経済成長を引っ張っている
2000-04年の「農林水産」「工業」「サービス」それぞれのセクターの実質GDP成長率の寄与度を見ると、全体の成長率6.0%に対して、農林水産は0.4%、工業は1.7%、そしてサービスは3.9%と成長のエンジンになっている。さらにGDPシェアでも最近50%を越えた。
2.「内需拡大型」の経済発展を続けている
NIEsとかASEANとか中国は「外需指向型」の経済発展を遂げてきたが、インドは内需の拡大を基本とした国内市場中心の経済発展。付加価値の最終需要先でも、最も海外依存が高い工業セクターでさえ全体の2割弱。
3.貯蓄率が向上しており、貯蓄→投資サイクルが回ってきている
中国の貯蓄率の高さはちょっと異常だが、東/東南アジアの各国の貯蓄率は大体30%前後。インドは90年代までは20%代だったが、近年30%を越えてきた。これに伴い投資率も東南アジアに追いつきつつある。
+1.工業セクターは弱い
これは後述


アジア主要国との産業構造を比較するとたしかにサービスの伸びは高く、工業は横ばいだ。


で、当然のことながら工業セクターの成長はどうなのよ、という話になるんだが、これは政策如何で十分成長セクターになると思う。

工業セクターが低成長にとどまっていた理由


インドは1991年の「新経済政策」までは「混合経済体制」なる経済政策をとっていた。この政策の大きな柱は以下の二点。

公共部門と重工業の優先
1947年の独立後、経済発展のために主な重工業は公共部門が担う体制をとっていた(さらに消費財やサービスまで公共部門がカバーしていた)。残り物の産業は民間部門の領域だが、そこでもある一定規模以上(従業員50人以上、または動力を使用しない場合は、従業員100人以上を雇用している工場をもつ企業、また資本規模は1,000万ルピー以上)の企業には「産業許認可(ライセンス)制度」がとられ、政府の厳重な管理化に置かれていた。
小規模工業保護
上記の規模以下の小規模工業(Small Scale Industry:SSI)は逆に雇用確保・所得平準化の目的から支援策が積極的にとられた。特に本来は労働集約的に行うべき繊維、玩具、靴、皮革品といった産業を小規模のままにとどめるインセンティブを与えるような政策を続けてきた。例えば金融機関は総貸付額の40%を小規模工業、農業、家内工業なんかの部門に貸し付けることを義務付けられている。


なんか後者は日本の農業を思い出したりもするんだが、まあ置いとく。


加えて、がちがちの労働法があるらしい。従業員100人以上の企業は州政府の許可なしに労働者を解雇できないらしい。ようは効率的な資本・労働移動がおきにくい産業構造になってたってことだ。外資規制なんかも当然強かったんだろうし。


でもこういった状況って、産業政策変更で一気に変わりそうじゃね?

工業セクターの政策変更で成長は実現できるんじゃね?


ようは上で挙げたような政策を転換すりゃいいってことだ。外資の導入とか官営事業の売却とか税制改革とかお決まりのメニューがもろに効きそうだ。労働法については左派勢力の抵抗が強いらしいんだが、人口増えまくってるからねえ。新規採用だけでなんとでもなりそうな気もする。なあに、かえって免疫力がつく


インドは現在、内需拡大にともなって中間財とか原油とかの輸入が急増しているらしく、経常収支は赤字らしい。まあこれは貯蓄率の増加とか外資導入とか輸出拡大とかでファイナンスすることになるんだろう。


ま、カースト制とかパキスタンとの紛争とか色々と課題はあるんだろうが、なんとなく楽観視するということでFA。