fhvbwx氏のファイナンス的人生設計の難点

Apple100% blog跡地 - 経済学(正確に言うとファイナンス)を勉強すればするほどお金がいらなくなる矛盾
⇒ http://d.hatena.ne.jp/fhvbwx/20061025/1161794498


ネタにマジレス。



まずはキャッシュフローをどうやって獲得するかを考えないとね


ええと最大の問題はどうやってキャッシュフローを生むのかという部分の欠落です。既に一生遊んで暮らせるだけの資産(数億円くらい?)があるのであれば話は別ですが、何がしかの労働をした対価として給料なりを得ると仮定した場合、そのキャッシュフローが将来にわたってどれくらい安定的に生み出せるかを検討しとかないとな、と。


というわけで、保険の項目には以下のようなものを追加しておくべきかと。

  • 怪我をしたり何がしかの理由で働けなくなった場合(勤め先企業の倒産とかも含む)の所得補填保険(国民年金や失業保険の範囲内でリスクが全てカバーできると言うのであれば不要ですが)

割引済み現在価値を考えるポイントはありますよ


あと、「割引済み現在価値がでてこない」点ですが、これは資産形成の部分を無視しているからです。例えばの話として、賃貸と一戸建てどっちが有利かというのは現在価値を考えないと一概には言えません。数値例で考えてみましょう。

  • 一戸建ての数値例
    • 価格は1,000万円
    • 居住可能年数は20年
    • 20年後の残存価値は0(つまり売れない、その代わり取壊し費用とかもかからないとする)
  • 賃貸住宅の数値例
    • 家賃は月5万円
    • 居住可能年数は∞


仮に金利は年率3%ととでもしておきましょうか。さて、この場合比較するのは「一戸建てを買う1,000万円」と、「賃貸に20年間払う家賃の現在価値」となります。計算すると賃貸に20年間支払う家賃の現在価値は約919万円。この場合、賃貸にすみつづけることが合理的なわけです。


ではインフレが起きた場合どうでしょうか。細かい説明は省きますが、インフレによって実質金利が低下することがあるので、インフレ下では借金をすることが有利になる場合があります。その場合は1,000万円を借金して一戸建てを買ったほうが合理的な場合があります。


仮に実質金利が2%だったとしましょう。先の例の金利3%が実は名目金利で、インフレ率が1%あった場合に相当すると思ってください。この場合、20年間で支払う家賃の現在価値は「約1,001万円」になります。おおなんてうまく出来た数値例だろう。つまりこの場合は家を買っても賃貸に住んでもほとんど差が無いということになります。


さて、ここまでのお話は全て「将来のことが完全にわかっている」というありえない前提のもとでのお話です。実際のところ家賃が将来どうなるかとか金利がどう動くかとかインフレ率がどう変化するかなんてわかりません。この不確実性を考えると、借金して自分のバランスシートにレバレッジをかけるというのはリスクを高める可能性があるわけですね。このリスクを完全にカバーできる保険があればいくらでもレバレッジかければいいわけですが、残念ながら完璧にリスクをカバーする保険が見つかるかどうかはわかりません。

あと個人のリスク選好にも効用は依存しておりますことよ


人はそれぞれリスクについて異なった効用を持っているものです。リスクをとることによって効用が高まる人もいれば、リスクを回避することで効用が高まる人もいます(経済学的には合理的な個人は「リスク中立的」だとして扱いますが)。


お見受けしたところfhvbwx氏は資産形成に関しては「リスク回避的」行動のほうがお好きなようですので、なるべくボラティリティを下げる方向で(つまり賃貸で)人生をおくることにより効用は高まる可能性が高いでしょう。


ただし老後の貯金とか生命保険などの項目を見ると、よくて「リスク中立的」、もっと言えば「リスク選好的」に見受けられる点が気になります。fhvbwx氏の想定する「最低限のリスクカバー範囲」、つまり「葬式代が出るだけの生命保険があればいい」とか「老後の生活費が出ればオッケー」というのは一般的に言えばリスクを限定的に見すぎではないかと。老後に大病する可能性だってあるよねとかハイパーインフレ起きたらどうしようとか色々色々。


ですので、まったくもって余計なお世話ではありますが、保険についても「リスク回避的」な行動をとられるか、もしくは資産形成に関してより「リスク中立的」に行動するといった修正を行ったほうが一貫性という意味ではよろしいかと。