節子、それ「負債」やない、「遊休資産」や


前に書いた、「持ち家は『資産』ですよね」はてブコメント(あれ、消えてた)で「一度本かレビューに目を通しといたほうがいいんじゃね?」というものがあったので、もしかしてはずした?と気になっていた。


本を買うのもばかばかしいので、まずはネット上のレビューを探すと、なんか死屍累々というかだめそうな感じがひしひしと伝わってきて萎えた。しかも前のエントリには下らん投資勧誘のスパムトラバがばんばん飛んでくるし。ブックオフで探すかなとも思ったが、結局読むのはやめた。ネットで挙げられていた記述から想像して書くこととする。なので、このエントリの記述がこの本の内容を正しく反映している保証はない。



ようは「負債」といっているのは「遊休資産」のことでしょ?


この本で「負債」といっているのは、例えば高級乗用車だったり持ち家だったりという「自分のポケットからお金を取っていくもの」らしい。で、「資産」とは他人に貸した不動産だったり金融商品だったりという「自分のポケットにお金を持ってきてくれる」もののようだ。じゃあ「保険」とかはどっち?とか思ったんだが読んでないのでわからん。


前回は、「キャッシュフローを生もうが生むまいがB/S上の『資産』は『資産』だ」という一言で済ませたんだが、もうちょっと補足説明をしておく。


この本で言うところの『資産』と『負債』の分類を企業の例を持ち出して説明しとこう。


企業が持っている「資産」はいろんなものがある。それらの資産には工場があったり店舗があったり自社ビルがあったり社員寮があったり役員用の社用車があったりいろいろするんだが*1、このうち企業に売上をもたらしてくれるのは工場とか店舗とかの実際にビジネスに利用する資産だ。で、自社ビルとか社員寮とか役員用の社用車なんてものは売上を上げてくれたりはしない。で、この本の分類に従えば、前者が「資産」、後者が「負債」となる。


ちょっと前に企業が自社ビルを売ったり社員の福利厚生という名目で持っていたグラウンドを売ったりして「B/Sの圧縮をやってます」なんていうニュースがあったが、ようはビジネスに関係ない資産は持っててもあんまり意味がないので資産を売って負債を返したりしたわけだ。



これをやることで、総資産利益率ROA:Return on Asset)が改善するわけ。


今まで100億円の資産があって、10億円の利益をあげていたとする。この場合のROAは10÷100=10%。で、例えばこの会社に遊休資産が50億円分あって、それを売り払った場合、ROAは10÷50=20%に改善する。


ようは「利益(≒キャッシュフロー)」を産まない資産は持ってても無駄ですよね、というだけの話。しかもそれを借金してまで持ってるなんてナンセンスですよね、と。これを個人に当てはめて考えましょうというのがあの本の話なんだろうなと思う。で、キャッチーな『資産』『負債』という《間違った》言い方を採用したのかなと想像しとく。

最小限の資産で最大の利益を生んだほうが効率的でしょ?


これが企業の話だったら誰でも当たり前と思うでしょ。でもこれを個人に当てはめるとなぜかみんな混乱する。


個人が生み出している売上なり利益なりキャッシュフローはなんだというのをまずは考えてね、という話だ。サラリーマンだったらまずは「給料」だし、次に「預金の金利」だし、さらには「株の儲け」といったものだ。「持ち家」とか「高級外車」はこれらにほとんど関係ない(ただし、高く売るというキャピタルゲイン狙いだったら一概に否定はしない)。逆に個人商店のおやじさんだったら「住居兼店舗」は立派な資産だ。配達用のトラックも立派な資産。


すごくつまらない言い方をすれば、「自分がどんなビジネスモデルで稼いでいるかをちゃんと把握しましょうね」というだけの話だ。その上でそのビジネスモデルを最小限の資産で回すにはどうしたらいいのかを考えれば、おのずと「35年ローンの郊外一戸建て」を買うべきかどうかはわかるのではないかと。


ついでにこの手の人生ファイナンス劇場の本だったら、僕はこっちを推すな。


世界にひとつしかない「黄金の人生設計」

世界にひとつしかない「黄金の人生設計」

*1:ほんとは在庫とか売掛金のほうが重要だったりするんだが、個人のB/Sのデフォルメなのでこのへんは無視