dankogai氏がなぜか今ごろエイプリルフールをやっている件について


404 Blog Not Found:経済の「複素」像 - 書評 - 「お金」崩壊


どこから突っ込んでいいかわからないんですが、もしかして釣られた?



フローとストックを混同してはいけません

GGP (Gross Global Product)が3割増しにしかなっていないのに、金融資産が倍以上になる。なぜそれが可能になったかといったら、金融経済が完全に「仮想化」されたからだ。「モノ」の裏付けがないからこそ、たった10年で倍以上(年率8.5%)という「成長」が可能になったのだ。


GDP(ここでは「GGP」とか言ってるけど)は「ある国がその一年間に生み出した付加価値の合計」だというのはご存知ですよね?これは「フロー」です。そして金融資産は「ストック」だというのもご存知ですよね?


ですので、上でおっしゃっていることは比較してはいけないものを比較しているだけという話なのですが、これはわざとですよね。いやあ釣られたなあ。



「実」=「CF」、「虚」=「CF流列の現在価値」

それだけなら、問題とは言えない。「その分インフレが進んだだけ」という言い方も出来なくはない。問題は「虚経済」の急成長に耐えられるほど「実経済」が大きくないこと、にも関わらず両方の経済がリンクしていることにある。虚が虚、実が実だけで回っているならいい。しかし圧倒的に多きな虚で実を手に入れようとした時、実はどうなってしまうのだろうか。


「インフレが進んだだけ」というのは別に名目値か実質値かがはっきりしてればいいだけなので、なにが問題なのかわかりませんが(というか、ここで挙げられているGGPって名目値なんですか?実質値なんですか?)、「虚経済」と「実経済」は密接に関係がありますよ。


企業にたとえて見ましょうか。dankogai氏も株とかお持ちですよね。株価ってどうやって決まるかをここで説明するのも気が引けるのですが、一応念のため。


企業の株価は、その企業が将来にわたって稼ぐであろうキャッシュフロー(CF)を現在価値に換算して合計したものになります。ですので、例えば赤字の企業でも将来の成長が見込めれば株価は上がります。ようは企業のキャッシュフローという「実」と、時価総額という「虚」には実に密接な関係があるわけです。


さて、ではこの「実」と「虚」が今の日本でどれくらい乖離しているかを見てみましょうか。例えばトヨタ時価総額は現在17.6兆円くらいですが、トヨタの前期の利益は1.8兆円くらいです。なんと!キャッシュフローという「実」と比べて、時価総額(=金融資産)という「虚」は10倍(つまりPERが9.98ってことですが)にもなっちゃってますね!先の「GGP」と「金融資産」の比較では「35兆ドルのGGPに対して、金融資産の合計は120兆ドル」でしたので比率的にはたかだか3.4倍強なんですが、10倍なんて!これは大変なことです!こんなんじゃ「実」は巨大になりすぎた「虚」に耐えられませんね!


わあ、Googleなんてこの「実」と「虚」の比率が33.8倍にまで開いてしまってますよ(P/Eの項目見てね)。なんて恐ろしい「虚経済」だろう!


・・・ってことをおっしゃっているんですが、これはエイプリルフールですよね?



もしこの本の内容が本当なら、dankogai氏に儲け話をご提案いたしたく


もしご紹介されている本の内容を信頼されているようでしたら、一つ儲け話があるのですが、ご検討いただけますか?


エントリで主張されているように「現在の金融資産は大幅に過大評価されている」とお考えになっているのであれば、あらゆる金融資産を全力で空売りされてはいかがでしょうか?


この本によれば、現在の「虚」の金融資産は、「実」と比べて大幅に過大評価されているようですので、もしほんとにそれが正しければ、将来的には必ず適正な水準まで調整されるはずです。こんなに明々白々な市場の歪みが存在しているのをみすみす見逃す手はありませんよ!是非、前向きにご検討いただければ幸いです。あー、お礼とかは結構です。逆に損をしたからといって訴えたりしないでくださいね(はあと)。


ついでに「ウィンプ」の方々もこの大商いに乗ってみてはいかがでしょうか。一攫千金で「マッチョ」になれるかもしれませんよ。ただしこの本の主張の「逆張り」をお勧めいたしますが。



ちょっとまじめに明らかに間違っているところを一点だけ


こんなトンデモ本を買う気も起きないので、紹介ページに掲載されてる部分だけ。


「お金」崩壊| 青木 秀和| 集英社新書|BOOKNAVI|集英社

私たちのお金はどこへ行ってしまうのか?
私たちが貯蓄する「お金」は公の借金返済に投入されている。しかし、それは返せる当てのない借金だ。もはや、「お金」には実体も価値もない。こんな社会からの脱却を呼びかける、新しい経済論。


もうこの手の話は聞き飽きた方も多いかと思いますが、念のため。


確かにわれわれが銀行に預けている預金は、銀行によって国債購入に充てられています。でも、わあ、大変だとはならないです。なぜなら、日本の国債を所有しているのは大半が日本国内の企業や個人です。ですので、政府が借金返済で払っているお金のほとんどは、日本の企業や個人が受け取っています。別にどこかに消えてなくなっているわけではないです。


ちなみに著者の方は「もはや、「お金」には実体も価値もない。」とおっしゃっているようですから、このお方に「今お持ちの『実体も価値もないお金』を僕にください!」とお願いしたらくれるんでしょうね。


あと、この本のためし読みページというのがあるんですが、もう典型的なミスリーディング「国債破綻論」で、突っ込む気力も失せます。


一人当たりでいくらとか、四人家族でいくらとか、あるいは家計に置き換えて説明されれば、こうした政府債務の大きさもいくらか分かりやすくなるかもしれない。


財務省によれば、二〇〇七年度末時点で家計換算してみると、国債だけに限ってみても月収四〇万円の家計が四六〇〇万円のローン残高を抱えている状態だという。



なんかもう「国の債務を『家計』にたとえてる時点でトンデモ確定」ということは繰り返しいわれているんですが、なぜか懲りずに沸いてきますね。




余計なお世話かもしれませんが、こういう本を勧めるのはどうかとおもいますよ>dankogai