良い戦略、悪い戦略
「giveup」タグ二冊目。
「良い戦略とはシンプルで実行すれば絶大な効果を発揮する」のはよくわかる。が、「そのような戦略を採用している企業や組織、国はわずかしかいない」のであれば、その「良い戦略立案論」というのはただの「画餅」ではないのん? この本のAmazonでの評価は高いけど、それは読み物としての面白さという評価ではないのかな、と思った。
第一部の良い戦略に共通する要素(本書ではそれを【カーネル】と呼び、「診断」「基本方針」「行動」に分類される)を抽出し、悪い戦略にはいかにこれらの要素が欠けていたかを分析するあたりは大変面白く読んだ。そして良い戦略とは「自己の強みを敵の弱みに一気にぶつけること」という説明も腑に落ちる。ようは敵の中から「四天王の面汚し」を探しだしてそいつに狙いを定めて戦うべきいうことだ。
さてではその「強み」の分析を扱う第二部に期待するじゃない?でも第二部に入るとなんか全方位的に「あれもこれも、見方によっては、使い方によっては、時期によっては、指揮するリーダーの資質によっては強みになるんじゃね?」という八方美人的な展開になってしまう。そして第三部では良い戦略を立案するための思考法のテクニックを解説するんだが、どれも「それができれば苦労しないよね?」ということばかりで、実地に応用できる気がしない。ジョブスみたいな奴がゴロゴロいるはずないんだよね。
というわけで結局、良い戦略を立案・実行するには特別な才能、能力、環境が必要であり、一般的な企業や組織、国でそのような条件に恵まれるケースは稀で、だから世の中には悪い戦略が蔓延してるという身も蓋もない結論に至ってしまった。
我々に必要なのは「悪い戦略」という制約条件の下で、被害を最小限に抑え成果を最大化するための効果的なあがき方の指南なのではないか。そしてそれは多分地味なデータの収集・分析の積み重ねなんだろう。その意味では「統計学が最強の学問である」を読むほうが、よほど「戦略的な行動」だと思う。
- 作者: リチャード・P・ルメルト,村井章子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/06/23
- メディア: 単行本
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