2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する
仕事関連で参考文献として買った本だったが、予想以上に面白かった。The Economist誌はもともと大好きな雑誌だが、イギリスらしい皮肉の効いた悲観的な論調が多い印象。でも、この未来予測に関しては楽観主義で一貫している。
特に前サイエンス・テクノロジー担当エディターだったマット・リドリーによる第二十章「予言はなぜ当たらないのか」は是非一読をおすすめする。
・今から四○年前になされた予言を見ると、悲観的な予言ばかりで、しかもそれはことごとくはずれている。
・なぜそうした予言が外れるかと言えば、理由はふたつある。ひとつは、良いニュースは目立たず、人々の記憶に残りにくいからだ。悪いニュースだけが残り相互に連関するという認知のバイアスが人間の側にあるので、そうした予言をすることが受け入れられてしまう。
・もうひとつは人間が対策を講ずることを無視しているからだ。 (p.422)
リドリーは「悲観的な予測」とそれがはずれた例として、「人口爆発(人口成長率は半減している)」「世界の砂漠化(サヘル地域は緑化が進んでいる)」「石油とガスの枯渇(石油とガスの備蓄量は増大し、近年は石油価格が下落している)」などを列挙する。共通するのは「人間は起きうる問題に対して直線的ではないものの試行錯誤を経て、なんとか対処してきている」という歴史的事実だ。
個人的に「ふむー」となった予測が次の3つ。
- エネルギーは今より安価になる
- 人間一人がそれなりの生活をするためのリソース(土地、エネルギー、資源など)はより少なくて済むようになる
- バイオテクノロジーも安価になり、医療での革新と、種の復活などの環境的な革新も起きうる
未来を考える際の前提として頭に叩き込んでおきたいアイデアだわ。この本読んでから長期的かつグローバルな問題に関しての悲観論者の意見はまじめに聞く気が失せている(短期的な危機にうまく対処ができない、間に合わないという事態は起こる。ここでの楽観主義は長期の話ね)。
二○五○年になっても、メディアが(どんな形態をとるにしろ)悲観論者たちに支配されているのはほぼ確実だろう。 (p.412)
この予言がはずれてくれてればいいんだが。
- 作者: 英『エコノミスト』編集部,船橋洋一,東江一紀,峯村利哉
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: 単行本
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