ホリエモン待望論への違和感


三十過ぎの男はなぜA-haの「Take on me」が流れるだけで盛り上がりますか(挨拶)。


ホリエモン待望論らしきものをそこここで見かけたりしたんだが、当初の「ライブドアに技術力はあった(=虚業否定論)」くらいは別にどうでもよかったんだが、「ホリエモンみたいなパトロンがいなくなってwebコンテンツの新しいサービスが出てきにくくなった」なんて意見を見ると、なに寝ぼけたことをいってるんだと感じてしまう。



トラフィックがキャッシュを産むという仮説を誰も証明できてない


ライブドアがポータル事業の強化を狙って様々なwebコンテンツを自社開発や他のサービスからのインスパイアや他社の買収などで獲得していった戦略における仮説は「トラフィックはキャッシュを産む」というものだったはずだ。


それが実現するのはいつのことかという点は明確になっていなかったが、とりあえず近い将来にはこの仮説が現実のものになるという前提でポータルの強化を進めていたはずだと思う。


まあ普通の経営者なら、金融サービス等でもたらされるフリーキャッシュフローの枠内で投資活動を行うところなんだろうが、ホリエモンはより積極的に『買収通貨』として自社株を活用した。


そして、自社株を買収通貨として活用することも別に否定しない。株式交換で事業なり企業なりをライブドアに手渡した人たちは、ライブドアのポータルに参加することによってより大きなキャッシュをもたらす可能性を信じてライブドアの株券とwebコンテンツビジネスを交換したわけだ。


別にこれも常軌を逸した行動とも思わない。ただし、ライブドアのポータルに参加するためにwebコンテンツビジネスを売り渡すという経営判断は、当然ホリエモンの思い描く「トラフィックがキャッシュを産む」という仮説に乗っかるということを意味する。自分でキャッシュを産みだす仕組みを確立するよりも、より確実な乗り物としてライブドアを選んだという話だ。


しかし、ライブドアのポータル事業は現在にいたってもまだキャッシュを産んでいるとはいいがたい状況にある。そしてそれは多くのwebコンテンツビジネスにしたって同様に当てはまる。まだだれも「トラフィックがキャッシュをもたらす」という仮説を納得の行く形で証明してはいないのだ。

株式交換でwebコンテンツサービスを渡した人は怒ってないとおかしいだろ


株式交換ライブドアにサービスを売った人は、ライブドアが仮説証明を成功させることが出来ず、しかも上場廃止にまでなったわけだから、本来は怒るべきだろうと思う。自分たちよりも仮説を証明する力があると思ったからこそビジネスを譲渡したわけだし、さらに言えば、ライブドアがそのビジネスを遂行することでより大きなキャッシュが得られると考えていないとおかしいわけだ。


だとすれば、まだ仮説が証明できてない現時点で、ライブドアの株券と交換にビジネスを手渡した人たちはまだまだ後生大事にライブドアの株券を持ってないと話としておかしい。もし、事業を譲渡したすぐあとに『現金化』してたとしたら、それは売り抜け詐欺に近い話だ。


本来であれば、ライブドアがポータルで莫大なキャッシュを産みだし、それによってライブドアの株が値上がりすることを期待していたはず。もしライブドアの株を手にしたすぐあとに市場で売り払っていたのなら、『自分たちはこんなビジネスがキャッシュを産むなんて思っていませんでしたアッカンベー』と言っているようなものだ。

パトロン待望論の人たちはほんとにこの仮説を信じてるのかね?


ホリエモンというパトロンがいなくなって困ったね、寂しいね」とか言っている人たちは、「自分たちでこの仮説を証明しよう」と考えるのではなく、「誰でもいいからこの仮説に乗っかってくれるお金持ちはいないかな」と探しているようにしか見えない。


通常、IPOとか株式交換をした場合とかは、双方の経営陣とか関係者はある一定期間は株を売ったり譲渡したりできなくするロックアップ条項がついて回ると思うんだが、ライブドアの場合はどうだったんだろう。細かい契約なんか見るすべはないので、真相は知る由もないが、通常のIPOとかなら180日くらいがロックアップ期間の相場だ。ライブドア株式交換で事業譲渡をした人たちは180日後にいっせいに株を売り払ったんだろうか?


ベンチャーキャピタルなら別にロックアップ解除後すぐに現金化したってかまわないと思う。ファンドの期限なんかもあるし、そもそもこの仮説が証明されようがされまいがある時点で目的のリターンが達成できればいいだけの話だし。でも、コンテンツを自ら手がけている人たちはそうじゃないだろと。この仮説を証明することが本来の目的なら、ライブドアみたいな会社に証明を任せた俺がバカだったという悔恨の言葉がブログなりにあふれ出てこないとおかしいだろと思うんだが、寡聞にしてそういう話は聞かない。webコンテンツに関わっている人たちがロックアップ解除後に即売り抜けていたとしたらなんじゃそらと思ってしまう。


逆にフジテレビとかのほうがきちんと怒っている。フジテレビはきちんとライブドアの株のロックアップ条項を遵守していたし、シナジーなんて信じていなかったとは思うが事業提携の話も進めていた。

確かにベンチャーにとってExit戦略は大事だとは思うけど


キャッシュを生み出すという仮説も証明できないのに、新しいパトロンが現れないかなあなんて考えは投資家舐めんなといいたくなる。お前らGoogleに売り込んでみろよと。ひどい言い方をすれば「自分のやりたい面白いことに誰かお金くれないかな。うまくいくかどうかなんてしらないけど」と言っているように見えてしまう。こういうのを買収しちゃう上場企業もどうかとは思うけど、おバカなパトロンを探すことが目的になっちゃってるようなベンチャーを見るのも気分のいいものではない。




それにしてもいい天気ですなあ。