池田センセは繰り返す
ちょっと気になったことをつらつらと。あ、決してヲチャではありません。念のため。なので今回はトラバも飛ばしません。
これの第3パラグラフ
ただ日本の不動産バブルと違う点は、アメリカの住宅ローンは単純な融資ではなく、銀行が貸出債権をまとめて証券化して売却することだ。これによって銀行は、利益を得るとともに貸し倒れリスクをまぬがれるので、債務者を厳密に審査するインセンティブがなくなる。低所得者でも、返済が滞れば担保になっている住宅を競売にかければ、不動産価格がどんどん上がっているので回収できる。したがって返済能力におかまいなしに、担保価値の90%といった高額のローンを組ませる――という20年前の日本とよく似た状況が出現したのだ。 (太字はryozo18)
ええと、このパラグラフの最初では「日本の不動産バブルと違う」と仰っていて、同じパラグラフの最後では「20年前の日本とよく似た状況が出現した」と書かれているのはもの凄く矛盾じゃねえの?
「20年前」ってことは1987年前後のことを指すんだろうと思うので、これはいわゆる日本の「バブル前夜」か「バブル膨張期」にあたるはず。この時期に、不動産に向かった資金の多くが、実質的に銀行の子会社であった「住専」経由で出ていたことは常識レベルの話だと思っていたんだが。
「住専」についての細かい話は忘却の彼方なので外してるかもだが、このパラグラフの中段の「債務者を厳密に審査するインセンティブがなくなる」ってのは住専でも起きてた問題でしょ?
ついでに言えば、現在のアメリカのサブプライム問題の第二弾として問題になっている「SIV(Special Investment Vehicle)」は、オフバランスのための仕組みなんだが、当時の日本でもマイナー保有(でも実質支配)の会社は決算に乗っけてなかったよね?(つうか、当時は「連結」って概念自体が弱かったよね。だから「飛ばし」なんてのが横行したわけだし)
つまり、現在起きているサブプライム問題と以前の日本の不動産バブル崩壊を会計基準の面から見てみると、「現在のアメリカで問題になっている会計基準の穴を突いた可能性のあるSIV」と、「当時の日本ではそもそも連結という概念が整備されていなかった際に利用された住専」という似たような構図として見るべきなんではないの?
ということで、池田センセの当該エントリを素直に受け取るなら、アメリカのサブプライム問題は、「20年前に日本で起こった不動産バブル」と構造的には似てるよね、という結論で一貫してないとおかしくね?
ついでにいうとバーゼルの自己資本規制によって、銀行への国による資本注入があったりしたわけだが*1、これってもしかすると歪んだインセンティブ設計をされているかもしれないよねとか言われてもいたわけだが。
追記:これだった⇒P. Krugman "Japan's Bank Bailout" Japanese 「日本の金融再生ナントカって、ダメすぎ。」
全体の論旨自体は4割くらいは首肯してもいいかなという話なんだが、こういう点で疑問を持っちゃうと素直に読めなくなるんだよなあ。