いただいたコメント等について(1/2)


まあ正直ここまでのことになるとは思ってもいなかったので、ずいぶんと楽しませてもらいました。ほとんどネガコメがなかったのも驚き(と知人に言ったら(゚Д゚ )ハァ?って顔されましたが)。


はてブ、トラバ等々でコメントもずいぶんといただきましたのでとりあえずお答えできる範囲で。


このエントリでは主に最初の『新社会人が読んどけと思う本のリスト』について、次のエントリは主に『新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:三部作』についてという形で。多少オーバーラップすることもありますが、まあそこはそれで。


新社会人が読んどけと思う本のリスト - I 慣性という名の惰性 I
新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:前編 - I 慣性という名の惰性 I
新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:中編 - I 慣性という名の惰性 I
新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:後編 - I 慣性という名の惰性 I



「こういうエントリ好きだよな」

  • はてブの大好物
  • こういうブックガイト系は人気あるよなあ
  • この時期になると定期的にこういうのがホッテントリにあがるなぁ。


最初のきっかけは『プレジデント(3/31号)』の「特集 一流社員が読む本・二流が好む本」の程度の低さというか「お前ら『V字回復・三枝Love』っていいたいだけちゃうんか」というイライラを解消したいから書いたというのがほんとのところ。むしゃくしゃしてやった、今では反省している。


いや、あのリストの中にも良書はありましたよ。でもまず「一流」とか「二流」って言い方がかちんときた。「『二流』もなんもそういうふうにしか部下を育成できなかったやつがプレジデントとか読んでて恥ずかしくねえの?」と。「えーまじ、キモーイ、プレジデント読むのが恥ずかしくないのなんて三流上司だけだよねー、キャハハハハハ」だろと。「最近の若いのはこういう本を読まないからねえ」的な感じはほんとうに嫌いだ、と。だいたい読みたくたって時間ねえよ、と。育成すら自己責任ですか、と。司馬遼太郎はもう死にましたよ、と。


で、カウンターとして書くのなら今の時期は新社会人の人向けに書くほうがいいだろうし、キャッチ−でもあるし、すいませんタイトルは釣りですとも言いやすいかなと。まさかここまでになるとはこっちも想像してなかったですが。



「消化できないだろ」

  • ブクマで満足 / アマゾン購入して満足 / 読んで満足 / 理解して満足 / 活かして満足 / 自戒を込めて。
  • 意気込んでる内が華なのだろうか。
  • 全部一気に読むと死ぬと思う。読書→経験→再読のサイクルが無いと腑に落ちない場合が多く、読み過ぎると消化不良になってしまうので。
  • せめて5冊ぐらいにしてよ読み切れない・・・
  • イノベーションのジレンマ」は、入社2年目くらいで買ったけどそのときは難しすぎて読めず、5年目くらいになってもう一度読んでみたらスラスラ読めて超面白かった!という経験あり。


あのチョイス自体はけっこう本気で学生の人たちに読んで欲しいなとは思うんですが、「こんなの消化できねえだろ」というのもまた事実ではあります。ただ個人的には、この手の「消化に時間がかかる」本を読むようになったのは、大学時代の恩師に「すぐに役に立つ本は、すぐに役に立たなくなるよ」と言われたのが一つの契機ではあります。


で、会社に入って日々業務をやっていると、あんな本を手に取るような体力・気力は残らないよなとも思うわけで、少なくとも本棚みればあの手の本があるという状況は作っといたほうがいいんじゃないかなと。


社会人になってまず最初に気づくのが「自分の時間というものがほとんどもてなくなる」という事実。今まではなんだかんだバカなことやってても勉強時間とかはなんとか確保できたんですが、社会人になるとそんなの無理無理となる。


そして入ってくる知識・情報の質も変わる。学生のときは「広く・浅く」的だったものが、社会人になると「狭く・濃く」って感じになる。それはそれで面白いんだけど、自分の関係する分野・業界以外の情報っていうのがほんとに入ってこなくなる。かなり意識的にメディア選択・拡大をしないとほんとに広がりがなくなるよなあと。そのメディアの拡大の中にブログが入るかどうかについては、多少悲観的だったりもしますが(ライフ八苦とか体験談ばっかりじゃん)、まあブログもってるんだから文句いうよりは書けばいいかなと。


あそこに挙げた本を読んでも理解できないというのは別に普通だと思うし、全部を一気に読めるような人もいないと思って書いてます。ただ、あの手の本を持ってれば、それこそ芋づる式にいい本に出会う確率は高まるとも信じてるので(それこそAmazonの「この本を買った人は・・・」を見ればいい)、ともかく一回リスト化しとくかなと。


さらに言えば、あそこに挙げた本を「読みました」「面白かったです」と言う新人は無条件でかわいがりたくなるじゃないですか。「じゃあこれも読んでみなよ!」「こっちのほうが面白いぞ!」というシバキ主義の先輩もなかにはいますが(はい、僕です)。


そして逆に新人のほうから見れば、あの手の本って先輩の値踏みをするのに最適な材料でもあるわけで。例えば「イノベーションのジレンマ」で話が盛り上がれる先輩には全力でついていったほうが絶対にいいだろうし、そういう先輩の周りにいれば「いい本」「読むべき本」の情報にも簡単にアクセスできる。ああいった本は、そういう「面白いネットワーク」への入館パスの役割も果たしてくれるだろうという期待があります。


その意味で「お前にはまだ早いよ」とか「そんなの読むより技術書読め」とかいう高圧的な先輩は氏ね、と思います。「おおお、まだわからねえだろうけど、その本いいよな」というencourage型の先輩のほうが絶対にいいです。まあ個人的には、こういう本を読んでても珍しがられない/discourageされない風土の会社にいたというのは非常な幸運だったなと思いますが。



「社会人だけど読んだことありません><」

  • 数年前に新社会人だった俺だが一冊も知っている本が無い。いまから全部読んだらどうなるのだろう。
  • 旧新社会人ですけど読んでいいですか…


正直言って、「本をよく読む」と「仕事ができる」に因果関係はないと思ってます。もしそうなら僕は図書館の司書とか大学の先生とかを積極的にヘッドハントするベンチャーを立ち上げます。でもうまくいきそうにないのでまだやってません。


ただ、相関関係はあるんだろうなあと。


まとまった知識を得るための活動で一番投資効率がいいのはやっぱり読書だと思います。濃い知識、世に出回ってない知識なんかは人と会ったりしないと手に入らないとは思うけど、すでに広く公開された知識を得るには本が一番だろうと。


そういう意味ではネット、もしくはもうちょっと狭くいってブログというのはカタログでしかないわけで、「RSSのフィード数の多寡」を論じてもしょうがないと思ってます。カタログだけ集めてもねえ、と。あ、ニュースを狭く and/or 網羅的にカバーしたいという使い方なら否定しませんが。


で、本題に戻ると、社会人だけど読んだことないというは普通のことだと思うので、別にいいんじゃないでしょうか、時間があれば読んでみてはいかがでしょうか、え、こちらから買っていただける、ありがとうございます、という話ではないかと。


「でも時間が・・・」という方は、それこそそのためのライフハックをすればいいと思うので、勝間本とかを手にとって見てはいかがでしょう?



「ほかにもいい本あるよー」

  • Dカーネギーの本がないや・・・
  • 自分ならここにポリアの「いかにして問題を解くか」を加えたい。
  • ライトついてますか?とセットで「あたりまえのアダムス」を推したい
  • あとはバーバラ・ミント『考える技術〜』と、月並みだけどジャック・ウェルチは推しとこうかな
  • 吼えよペンが入ってない時点でアウト


あれでもものすごく削ったんだ、とだけ言っておこう。というか泣く泣く削るのもばかばかしいやと思って次の3部作書いたんだけどね。


上でいただいたコメントの本はどれもいい本だと思います。なので、リンクも張ってみます(おい)。あ、ちなみに「吼えろペン」ですよね?すいません、島本和彦は「炎の転校生」で止まってまして、評価は控えさせてください。


話し方入門 新装版

話し方入門 新装版

ええええ、普通は『人を動かす 新装版』推すだろ、という反論は折込済みです。でも新社会人的にはこっちのほうが実戦的だと思うんだぜ。まあどっちも読めという三方得でよろしく。


いかにして問題をとくか

いかにして問題をとくか

第I部の「教室にて」のpp.5-9までを読むだけでも先輩としての振舞い方の襟を正す効果があると思う。「目立たぬように、そっと助けてやらなければ」ならないというのは至言。ただ、ちょっと、かなり、けっこう難しくないですか?「システムの科学」はなんとかなったけど、僕はこれは厳しかったなあ。


あたりまえのアダムス

あたりまえのアダムス

いい本なんだろうけど、僕はまだこの本のほんとのよさはわからないです。もうちょっとたってから読み直すかな、ということで熟成中。


考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

これ、数年前(今もかも)うちの会社の新人研修の教材で使われるってのを知って小躍りしたことがあります。ピラミッドとかMECEにこだわりすぎて無理に全体を見ようとして、逆に細部に矛盾をきたすという弊害はなきにしもあらずでしたが、そんな欠点は1年もすれば自然と消えます。お勧め。


オーレ! 01 (BUNCH COMICS)

オーレ! 01 (BUNCH COMICS)

熱いマンガといったらこれだろJK。ええ、Jオタですがなにか?この5巻で泣きましたがなにか?フヒヒwwサーセンww。




ウェルチは三部作で取り上げたので割愛。あと、これら以外にも挙げるとすればという本は一杯あるけど、まあおいおい見つけていってもらえればいいかなと。すくなくともこのへんにあがった本を数冊読んでアンカーにすれば、いい本は芋づる式に見つかるということさえ実感してもらえれば、あのエントリを書いた甲斐があります。



「本書いちゃいなYO!」


いまどき本書いて儲かる人なんていないでしょ。本業のプロモーションがメインでしょ。百歩譲って講演料とか雑誌の連載がメイン収入でしょ。つかめんどくさいっしょ。タイトルすら著者が決められないとかっておかしいでしょ。リア充ってののしられるんでしょ。ダンコーガイに献本しなきゃなんでしょ。書評されるんでしょ。献本しないで売れなかったら努力が足りないとかいわれるんでしょ。やでしょ。







蛇足


「アフィで儲けたいっていうのが見え見えなんだよばーかばーか」という反応があるのはまあしょうがないかなとは思うけど、このエントリを書くのにもコストはかかってるわけだし、そもそも挙げた本を読むのにもコストはかかってる。そしてこれ以外にも無駄だったなあと思う本も読んでるわけで、本を読むこと自体のコストってのは結構かかっている。今まではそのコストは本を読んで得た「なにか」から回収するしかなかったが、今はそのコストを別の形で回収する手段があるんだから使わない手はないだろ、と思う。


そして、いろいろ読んできた中で「これはいいよね」と思った本を紹介することは全体のロスを小さくする重要な働きがあると思っている。「必要と思ったら勝手に読むだろ」という反論もあるようだけど、読むかもしれないし読まないかもしれないし、それにどうせ読むなら限られた時間で変な本を読んで欲しくもないなという老婆心もある。知らない土地に行く時は地図を持ってるほうが楽でしょ?


というか、本音ではこういう本を読んでてくれたら僕が楽になるというのが正直なところだ。毎度毎度同じようなことを説明しなきゃいけないロスってのは結構苦痛だ。少しでも多くの人がこういう本を読んでくれると僕も楽になるという意味で、書評をするという行為には経済外部性があるのだ。


別に全部買えとか言ってないわけだし(それに買うのは読んだ人の判断でしょ?)、その批判をしてる同じエントリで自分もお勧めの本を紹介しているんだから、書評自体の効用は認めてるわけだしな、と。


嫌儲」的な意見はまあご自由にとは思うが、「書評エントリを書くのにもコストはかかってる」という事実を否定して「書評は完全ボランティアであるべきだ」という主張は結局のところ「書評の機会費用を高めてしまうので、結果的に書評の供給は減少するだろう」という本末転倒の結果になる危険性があるよ、と。「一段階の正義」っていい言葉だよね。