新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:後編
追記:いただいたコメント等について(2/2) - I 慣性という名の惰性 I
前・中篇より続く。
⇒新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:前編
⇒新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:中編
中篇では組織というものについて教えるための材料を考えた。さて、そろそろ「新人」君にも金を稼いでもらわないといけない。後編は具体的にビジネスを教えていく上で参考になる本を考える。
「お金を稼ぐ」ってことの大変さを理解してもらうための本
言い換えれば「お給料をいただく」ってことがどれだけありがたいかということを理解してもらうってことでもある。これを見せれば一発だろう。
- 作者: お金のナゾ調査隊
- 出版社/メーカー: ソフトバンク クリエイティブ
- 発売日: 2005/12/22
- メディア: 単行本
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別にこの本じゃなくてもいい。自分の会社の原価構造を知ってるんならそれを示してやればいい。「まず売上がある。そこから原材料費を引く。あと外注費、広告宣伝費を引く。光熱費とかもあるな。さて、残ったこのわずかな部分から俺とお前の給料が出てるんだ」でいい。契約とってきたり、メンテナンスを予算内で回すことがどれだけ大変なのか少なくとも頭ではわかってくれるだろう。
それでも「なんで頭なんか下げなきゃいけないんすか?」とかってな質問をしてきたら、クライアントと結託して一回一人でトラブル対応をする機会を作ってあげよう(はあと)。上司とか自分が出張にいってるとなおベストだ。
「スネーク、どうやら携帯の電池が切れたようだ。
これから先はお前一人の判断で動いてくれ。
政治的な問題だ。すまんなスネーク」
・・・これはパワハラですので、やってはだめですよ。
ミスをしないことの大切さを実感してもらうための本
「え、あれって今日まででしたっけ?」という無邪気な笑顔は見たくないんだ・・・ということで。失敗はするだろう。当たり前だ。でもそれを報告しないとか、繰り返すとか、そもそもそれがミスだって気づいてないとかってのが怖いんだよね。
- 作者: 畑村洋太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/15
- メディア: 文庫
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この本は「失敗からいかに学ぶか」がメインテーマなんだが、この本の背景には労働災害を統計分析したハインリッヒの法則が深くかかわっている。ハインリッヒの法則の一つとして「「重傷」以上の災害が1件あったら、その背後には、29件の「軽傷」を伴う災害が起こり、300件もの「ヒヤリ・ハット」したという「1:29:300」という比率が存在する」というものだ(参考:wikipedia:ハインリッヒの法則)。
ようは、小さなミスが積み重なるといつか大惨事を招きかねないってことを口を酸っぱくして言え、ということ。ま、失敗のパターンをつかんで改善させるっていう副次効果も狙ってるけど。
ミスを注意するときに読んどく本
で、ミスをするのはしょうがないが、その点は修正してもらわないといけなくなる。でも注意すると言っても逆切れされてもやだし、そもそもどういう風に修正すればいいのかという点で、具体的なアドバイスがないと難しいよね、と。まあぶっちゃけ精神論的には『働きマン(1) (モーニング KC)』嫁!でもいいような気もするが、まあ注意する際に参考になりそうな本を挙げとく。
いかに「問題社員」を管理するか (HBRアンソロジーシリーズ)
- 作者: DIAMONDハーバードビジネスレビュー編集部
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2005/01
- メディア: 単行本
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この本をオフィスの机の上に置いとくことは避けること。
____ / \ /\ キリッ . / (ー) (ー)\ / ⌒(__人__)⌒ \ <いかに「問題社員」を管理するか | |r┬-| | 先輩として責任があるからな \ `ー'´ / ノ \ /´ ヽ | l \ ヽ -一''''''"〜〜``'ー--、 -一'''''''ー-、. ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒)) ____ /_ノ ヽ、_\ ミ ミ ミ o゚((●)) ((●))゚o ミ ミ ミ だっておwww /⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\ /⌒)⌒)⌒) タバコ部屋でなんて言われてるか | / / / |r┬-| | (⌒)/ / / // 知らないのお前だけだおww | :::::::::::(⌒) | | | / ゝ :::::::::::/ | ノ | | | \ / ) / ヽ / `ー'´ ヽ / / | | l||l 从人 l||l l||l 从人 l||l バ ヽ -一''''''"〜〜``'ー--、 -一'''''''ー-、 ン ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒)) バ ン
自宅で読もうね。
この本で一番大事なメッセージはこれ。
「いかなるマネージャーでも社員の性格は変えられない」
なので、すべてのアドバイスは具体的な手順に絞るべきだ。「おまえもっとやる気出せよ」とかは禁句、というか意味がない。このへんも参考になるかも⇒『「やる気を出せ!」は言ってはいけない ~行動科学で見えてくるリーダーの新常識~』。それにミスをしないような具体的な手順のお手本は『頭のいい段取りの技術』(前掲)に一杯書いてるはず。「この方法でやってみてくれない?」と言うのが一番スマートなんじゃないだろうか。まあ理想は「俺のやり方真似してみなよ」が一番かっこいいけどな。
あ、もうちょっとスカッとしたい人はこのへんもお勧め。バカとはさみは使いよう、ってことがよくわかる(違う)。
- 作者: ツジトモ,綱本将也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/04/23
- メディア: コミック
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ミスの指摘とアドバイスが一番やりやすい分野とその方法についての本
この点を一番言いたかった。これさえ完璧にこなせれば、実は今までの教え方とかなんとかができなくたって全く無問題と言い切りたくなる。それくらい大事だけど、大変な作業。心して読んで欲しい。僕の心の叫びかもしれない。
新人の書いたすべての書類・文章・メールに一度目を通すべきだと強く主張する。そして、その書類・文章・メールのすべてに赤を入れるべきだ。反論は認めない*1。
この作業は絶対にやったほうがいい。どんなに時間がないと思ってもやったほうがいい。新人からものすごい勢いでうざがられてもやったほうがいい。自分の文章力は怪しいとかっていってしり込みすべきじゃない。
そしてこれは、あなた、上司、部署、会社にとってのリスク管理でもある。このためだけに会社は新しい手当(新人書類精査手当とかな)を作ったっていいくらいだ。会社レベルでは法務部というところが同じ作業をやってるわけだしな。
あ、大変なことばかりを強調したけど、これをやってあげると新人の成長スピードが驚異的に高まるよ、ということも付け加えとく。そのための本。
- 作者: 木下是雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1981/09/22
- メディア: 新書
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これ以外にもいい本はいっぱいある。でもまずはここからスタートすれば充分だと思う。僕はこの本を新人とか後輩とかに(一部、先輩にも)10冊以上は進呈した(自腹だ)。そして「とにかくこれを読んで下さい><」と懇願した。これを読んで文章や資料の構成が改善しなかったやつはいない(改善したあとでもまだ充分なレベルに達してないことはままあるけど)。
そして、これを読んだやつはほぼ例外なく「自分が書いている文章」に敏感になる。「一文が長すぎるかな?」「文字サイズ小さすぎるかな?」「1枚に詰め込みすぎかな?」「色使い、センス悪くね?」とか。そうなったら後は簡単。方向性を示してあげればいいだけになる。「ここでページ分けたほうがいいんじゃない?」で通用するパラダイスを想像してみよう。
この関係を作るためにも「赤を入れる/入れられる」という関係はごく当たり前のことなんだと思わせるように、まだ右も左もわからないうちから、本当のまっさらの「新人」のうちから徹底的に刷り込むべきだ。反論は認めない。
その他こまごまとしたことを教えるための本とかその他
ようやく終わりに近づいた。ここではだいたいの分野に共通する作業を教えるための本とその他を紹介する。
- そもそもの心がけ系
- 「読んどけよ」の一言で済ませるのは避けよう。
⇒2008-03-14 - 当たり前すぎて会社では教えてくれないフレッシュマンの作法 reponの日記
⇒島国大和のド畜生 ソコソコの社会人一年生向けマニュアル
- 仮説→検証という仕事の進め方を意識するための本
- 「これはこうやるもんだ」「(うまくいきそうにねえなあ)」という不毛さは避けたい。それには先輩のほうが仕事のやり方を変えるしかない。そのためにも「そもそもうまく逝ってるのは偶然かも」という感覚が欲しいところ。そういう本。
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書)
- 作者: 竹内薫
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/02/16
- メディア: 新書
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- たまには達観してみたいなあというときに読む本
- お主の悩みなぞ些細なことに過ぎぬでござるよと言いたいときに手にとってみよう。まあたぶんこの本に感化されて説教するとうざがられるだろうけど。
- 作者: 三島由紀夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1983/04
- メディア: 文庫
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大雨の感と云ふ事あり。途中にて俄雨に逢ひて、濡れじとて道を急ぎ走り、軒下などを通りても、濡るる事は替わらざるなり。初めより思ひはまりて濡るる時、心に苦しみなし、濡るる事は同じ。これ万づにわたる心得なり。
- 責任とはこうやって取るものよ!という本
- 顧客に謝りに逝くときにこっそりかばんにしのばせとこう。
- 作者: 山本博文
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/05/16
- メディア: 新書
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つ『切腹最中』
あとは、いただいたコメントとかについて思ったことを別エントリで書いてみようと思う。
*1:とはいえ、プライベートのメールとかは見るなよ