いただいたコメント等について(2/2)
「いただいたコメント等について(1/2)」の続き。これは「新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:三部作」について。
⇒新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:前編
⇒新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:中編
⇒新人の面倒を見る羽目になった人向けの本リスト:後編
「新人教育に目をつけるとは」
- この視点はなかった!
- 新人教育なんて存在しないので「勝手に育て!」と言われ勝手に育った氷河期世代はつい「何故こんな事すら…」「自分で調べるという発想はないのか…」「これがゆとりか…」とか思いがちなので気をつけよう!
- いきなりやり方から教えるのが間違っていたのか。。。/あと2年早く理解していればorz
- 来週から新人つかせるから指導よろしくと言われてからでは読もうにも読めない前中後編に絶望した。
ええと、もっと風呂敷を広げるなら「社員教育にもっと投資しろ」というのが言いたかった。
日本のサービス業は生産性が低いとよく言われる。そしてその原因の一つとして挙げられるものに「日本の非効率な商習慣」というのがある。まあ確かに規制が多いとか、わけのわからん細かい行政手続きが多いとか、あれやこれやいろいろあるが、そのへんを円滑に進めるための投資が日本の企業には圧倒的に少ない。
自分も含めてだが、なにか問題が起きてから「さて、これってどうすんだっけな」とおもむろに調べだすのが常だ。で、資料とかみてもよくわからないから誰かに聞くしかない。で、聞いた相手によって返ってくる答えも違ったりする。そうしてずるずると無駄な時間が過ぎていく。
もう一つ。日本のホワイトカラーの生産性の低さもたまに問題になる(言われているほど生産性が低いとは思わないけど)。でもこの生産性については、同じホワイトカラーでも製造業といわゆるサービス業では異なっている。感覚的な話で申し訳ないが(これというデータが見つからなかった)、一般的に言えば製造業のホワイトカラーのほうが生産性は高いと思う。
この差が何から生まれているのかと考えると、一つは企業の「社員に対する能力要求水準」の考え方の違いからくるのではないかと思っている。
ホワイトカラーの話ではないが、例えばトヨタの板金工として採用された新人は、槌を振る基礎体力と最低限の技術を身につけるためだけに最初の1年間は1日数時間ただ槌を振らされる*1。また松下電器には有名な「課長研修」というものがある。この松下の「課長研修」は課長候補の社員を1ヶ月間(だったっけな?もっと長かったかも)研修所に隔離して、財務知識、法令知識、松下幸之助の経営理念、人事マネージメント等々の課長としての標準知識を叩き込まれる(最後に試験があってそれをパスしないといけなかったんだっけな?自信ないな)。松下のすべての課長以上の人たちはこの研修を経ているため、驚くほどその辺の知識にぶれがない。能力的に見た個性は当然あるが、いわゆる社内規定とかの知識は驚異的にみんなそらんじていたりする。
さらに、といってもこれはいい例ではないかもしれないが、韓国の大学生は就職前に大体2年間の兵役を経験している。サムソンの人とかと話してると「あいつとは部隊がいっしょだった」とか、「あの役員は空軍にいた。兵役の時からすでにエリート」とかという話を聞かされたりする。兵役義務自体の好悪はあるにせよ、彼らは「兵役義務を経た上での共通の経験・基盤」というものを意外と評価していたりする。例えば命令・指示の復唱とか、上下間の情報伝達のプロトコルとかは、改めて説明するまでもなく一通り身についていると言う。これって結構でかくないかと思う。
その意味で、ある程度共通した標準的な考え方を新人の間に構築するというのがすごく大事だと思ってあのエントリを書いてみた。
一部の企業では外部に委託したりしていわゆる「標準的ビジネスマナー」の研修を受けさせたりしている(大部分の企業は見よう見真似とか、お手軽なマナー本なんかで済ましているけど)。が、この手のビジネスマナーは社会人としての必要条件であって十分条件じゃない。でもこの「十分条件」の育成手法に大いに問題があるのもまた事実だ。
「旧人のほうが問題だよ」
- いろいろ思い出した…新人教育は大事です。
- 旧人にここら辺の教育をきちんとしないでおきながらOJTと称して新人を現場に突っ込むから、結局新人は適当に育っちゃうんだよねえ。
- バイト先の先輩に見せてあげたいです
さて、上では「必要条件としてのビジネス常識」の観点から新人教育の重要性を語ったわけだが、実は日本の企業の多くには、仕事の進め方というものに共通のプロトコルがない。その企業・組織独自が今までやってきた進め方を真似させるというやり方が「OJT:On the Job Training」という名目のもとで放置されている。そしてその仕事の進め方に標準形などなく、部署、ひどければ社員個人のばらばらなやり方が堂々とまかり通っている。
こういう状況下で、二人の新人がばらばらに配属された場合、誰の下につくかによってその後のOJTの成果にものすごいばらつきができてしまう。運良くいい仕事の進め方をする先輩につけた新人はめきめきと実力をつけるが、ダメ社員の下に配属された新人は成長という言葉からかけ離れた時間を過ごしてしまう。そして企業は、このばらつきを測定しようともしない。ある意味コントロール不可能といった感じで投げてしまっているように見える。そしてこの「放置プレー」はサービス業の多くの企業に見られる通弊だ。
こういった「仕事の進め方がばらばら」という環境の差を無視して「あいつは出来る/出来ない」という評価をされてしまう新人も不幸だが、もっと不幸なのは成長しない環境に新人を放り込むことで成長を阻害し、もし順調に成長していれば生み出されるはずだった成果を享受できない企業のほうだ。
たしかに、新人の現場投入時のお作法レベルを一定にするという意味での新人研修も重要だが、実は新人(広く言えば部下)に対して、きちんと計測・コントロール可能な形で現場の育成環境を提供するということのほうが重要だ。そして、この現場における育成環境(真の意味でのOJT)を作り上げるには、旧人に対して「標準的な仕事の進め方」の教育・研修をやって身に付けさせるしかない。そしてそれには投資をするしかない。
その意味で、今回の三部作と先の新社会人へ勧める本は実は交換可能だ。というか、本当は逆だ。「新社会人」のエントリで僕が「あらまほし」と思ったスキル・考え方は、「本来なら社会人たるもの必須の知識だろ」といいたい*2。というか、ああいう考え方で企業を経営するのが当たり前じゃないの?と。
でも現実は全く違う。
「イノベーションのジレンマ」的に自社の業界内での戦略的ポジションを語れる人がいるだろうか?
「ライト、ついてますか?」のようなオープンな問題検討・課題解決のロジックを推奨するようなチームがあるだろうか?(「とりあえず客の言ってるとおりにやりゃいいんだよ」というメンバーのなんと多いことか)
「はじめての課長の教科書」のように経営と現場をつなぐような情報ハブをこなしているような課長はいるだろうか?そもそも課長に昇進させる際にその手の能力を見て選んでいるだろうか?さらにはそのような情報の伝達を標準化させるような研修を課長に対してやっている会社はあるだろうか?
会計・ファイナンスにしてもそうだ。いくら新人にファイナンスの知識を教えたって、企業のプロジェクトマネジメントがファイナンスのロジックで動いていなければただの宝の持ち腐れだ。
はしごをはずすようなことを言って申し訳ないが、あの「新社会人」エントリで勧めた本の内容が活きる組織は実はあまり多くないだろうなと思っている。
でもだからといってこのままでいいって話でもないので、なんとか変えていくしかないだろう。そして経営を考えるときに「ファッショナブル」な経営論に流れることだけは避けて欲しいと思う。そのためにも「古典」「標準」「基礎」となりうる本を新書・文庫の制約の中でも意識的に選んだつもり。昔の名著の文庫化はその意味ではありがたい。でもほんとはもっとハードカバーも紹介したかったんだぜ。
「新人の質が落ちてるよー」
- でも最近「なんでできない」と思うことが多い。
- ふつうにいる。泣きたい。>このオファーをこなせない「新人」って想像できる?
- そもそも本をまったく読まない新人のほうが多いんだけどね・・・
まあそれは数千年前から言われていることだったりもするわけで。嘆いてもしょうがないよね、と。でも逆にいえば、その手のすぐに改善できることを教えるだけでほかの会社に比べて簡単に新人の能力が開発できるという考え方も出来る。ようは教えてみればいいんじゃね?と。こういうケースもあることだし。
単純な話、自分が一番苦労したのは、ビジネスの常識。
それも誰も教えてくれない、マニュアルにも記載がない事が、自分はほとんど何もできなかった時だ。
そもそもコピーで「ソート」なんてものを知らなかった時。
コピー依頼される→コピー→ページごとに縦横積み重ね→提出
▼結果:
ソートされてない・ホチキスが正しい箇所で止まってない→呆れられる
▼感想:
ソートとホチキスくらい最初から教えとけ。
たしかにその作業すべてが現場、さらには先輩個人が背負わされてるのを聞くと涙で画面が見えなくなるんだが、しょうがない。やるしかない。そのためには少しでも効率的に教えたほうがいいだろうし、そのヒントの一つになればいいなと思う。
ただ「もっと質のいい学生取れ!」と人事部にいうのはやめようね。「お前らがもっと稼げばいくらでもいいやつ連れてきてやるよ!」というブーメランになりやすいので。
てゆうか、最近はこう思うようになった。
「世の中が便利になってて、ついこないだまで学生だった彼/彼女はその環境を当たり前と思って生活してきたし問題も起きなかった。なのに会社に入るといきなり動きが鈍くなるって事は、会社って旧態依然でぜんぜん便利になってないってことなんじゃね?」と。
携帯のメールで日報あげて何かいけないんだろうか?ネットで本とか家電注文してすごしてるのに、なんでたかがコピー用紙の営業のためにこの人うちの会社に足運んでるんだろ?環境問題とか言ってる割には営業担当と自分が二人してスーツ着て電車乗って汗かきながら顧客のところに行く意味は?そもそも出社しなきゃいけないの?
や、最後のはたんなるわがままです。サーセンww
新人が「なんでこんな不便なことやってるんすか?」というのは実は業務改善の大きなヒントなんじゃないかと思う。岡目八目じゃないけど、外部から見ると簡単に指摘できる不思議で非効率な習慣というのはどの会社にもある。
新人の「利用者」としての感覚が麻痺してしまう前にその手の改善のヒントを一杯聞いとくというのは実は業務改善の問題点の洗い出しの一番効率的な手段かもしれない。高いコンサルなんか雇う前に一回試してみるべきだと思うよ。
「なんでこの手のハウツー本読むの?」
この手のハウツー本から入っていくほうが効率がいいかなと思ったので。いきなり最高峰の本読んでも意味がわからないし、吸収率も悪いだろうし。なので踏み台というか離乳食というか、そういう使い方。
もう一つは後輩とかに説明するときのマニュアルとして。「技術価値評価はいい本だから嫁!」といっても難しいだろうから、まずは「財務3表一体理解法」を勧めたほうがいいよなとか。さらにいえば、「財務3表一体理解法」の内容をOJTで教えるというのは負担でかすぎで無理でしょ、というのもある。本読んでくれればその負荷は軽減されるから楽だよね、と。
優秀になったかどうかはしりませんが、無理に最高峰ばかりを追いかけるよりは効率的に本を読めるのは事実。それにこの手のハウツー本読んでれば、後輩に補助線引いてあげる作業もやりやすくなるし、と。
そしてハウツー本も年々進化しているので(中には退化してるのもあるけど)、ツールと一緒で進化して便利になったハウツー本を使ったほうが効率いいので一応押さえとくかという動機もあり。
「おしえて!ryozo18!」
∩___∩ | ノ ヽ / ● ● | クマクマ | ( _●_) ミ 彡、 |∪| 、`\ / __ ヽノ /´> ) (___)f^f^f^f^f^f^f^f^f^┐ | |~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ │ | | 知ってるが │ | / | お前の熊度が | | / | 気にクマない | ∪ |___________| \_)
さてこれでやっと、ブラ・インフレ完結編に集中できるぜ。もうみんな忘れてるだろうけどな。
*1:NHKの「〜技能五輪に挑んだ若者たち〜」で見た記憶が
*2:このへんマッチョ的?