経済危機克服のための「有識者会合(エコノミスト・学識経験者)」要約その2:質疑応答編


最初は全文起こしやろうかとおもったんだが、途中でだるくなってやめた。一応大意ははずしてないつもりだが、内容の保証はしないのでご利用は計画的に。意味がわかりにくいところはryozo18が勝手に行間を補っているので、この要約をソースに空中戦をやったりはしないでね(はあと)。



質疑応答


麻生:1,400兆円の個人金融資産の貯蓄から投資へというのをやっている。しかし遺産相続を受け取る人の平均年齢というのは多分67とか8で、遺産を渡す人のほうはだいたい90ぐらい(平均で)。つまり贈与税を無税にしても受け取るほうが高齢者なので使わないのではないか。やる気はある。例えば具体的に、じゃあ1,000万を無税にするがその代わり必ず家に投資しろというようにモノにしないとだめなようにするわけなのか?


伊藤:議論はあるだろうが、一番即効性あるのは具体的に限定した場合だと思う。住宅でも何でもいいが、そういうものに使うような場合に限って一時的に贈与を無税にするというのは一つのやり方。そこまで限定するのはどうかということは議論があるだろうが。しかし、このような政策をとっても贈与しないような年配の方たちにもう「消費をしてもらう」という期待はできない。我々の言いたいことは「貯蓄から投資」ではなくて「貯蓄から消費へ」という視点に変えていく必要があるだろうということ。もちろん、深尾さんおっしゃったように投資にお金が回ることは決して悪いことではないんが、消費という形で使っていかない限りは内需が増えない。
もう一つ、今日は景気対策という視点で意見を言っているが、もっと広い意味で現在は若い世代に負担を押し付けているということ。この点を政治で変えていかないと活力は生まれない。


与謝野:不公平だといわれないためにはどういう考え方が必要かがわからない。不公平だと批判されたときに対抗する理屈が必要。


伊藤:一つのやり方として税金の上限を一律化するというやり方がある。現在は2,000万円を越えると50%の限界税率が課税されるが、これを100万円などに一律の上限を設けるやり方。


吉川:生前贈与と相続を清算する仕組みで不公平感を解決してきた。


麻生:たしかに1,400兆円は大問題ではある。今は高齢者世代は「欲しいものがない」。高齢者は「金があるから孫たちがよって来る。金がなくなったらよってこない」という不信があるのではないか。社会保障が安心ではないから現金で貯金を持ってしまっているのではないか。税金だけで所得移転ができるのか。


伊藤:中長期的には「安心」を確立しないといけない。例えば日本では可処分所得の4倍の貯金を持っている。諸外国では2倍程度。これは中長期的には変えていかないといけないが、短期的な対策として贈与税の一時免除というアイデアを出した。


河野:社会保障が充実していないから貯蓄があるというのはそのとおり。充実した介護などのサービスがあればそれに対するお金だけを持っていればいいが、そういったサービスがないので子供に頼らざるを得ない。そのためにお金を持っている。日本と並んで貯蓄率が高い国に中国がある。この中国の貯蓄率の高さの理由は二つ。一つは十分な社会保障制度がないということ。もう一つが頼るべき子供を「一人っ子政策」で制限してしまったため。


与謝野:経済の落ち込みをどの程度かさ上げすれば耐えられる範囲になるか。経済の下落すべてを政策で押し上げることはムリ。どの程度の押し上げに日本経済は耐えられるか。


麻生:GDPギャップが20兆円あるとするとどの程度財政出動をすればよいか。IMFですら財政出動が必要だといっている。ただ20兆円のギャップがあるとするとどの程度出せばいいのか。半分か。それ以上か。


河野:重要なポイントとして、2002年から2007年までの日本の累積の成長率は13%だが、そのうちの60%は輸出からもたらされている。世界経済が向こう数年で回復するという前提であれば、現在の財政出動を将来の税金でまかなうということも可能。しかし日本の年率2%程度の成長のうち、1%程度はアメリカの住宅市場バブル(によって生じた過剰消費)によってもたらされたとするならば、これは戻らない。つまり日本の成長率は1%に落ちてしまう。現在の試算ではGDPギャップは10%で50兆円。これを来年、再来年、その先と財政政策で埋めていくのは持続不可能。さらに、潜在成長率は2%弱から1%程度にまで落ちてしまっている可能性がある。この場合、財政政策はさらに慎重にならなくてはいけない。


吉川:「どこまで耐えられるか」という質問に関してだが、不況の影響というのは逆進的な性格を持つ。すべての人に等しく負担がかかるわけではない。より大きな負担を受ける層に対する対策が必要。


深尾:通常の財政政策では消費に回るのは50%程度といわれている。職業訓練ではこの消費性向はほぼ100%になり、費用対効果が高い。また公共投資は見かけ上のGDPは押し上げるが、価値のないハコモノのような公共投資をすると将来的には維持費だけがかかるというようなムダになってしまう。本来GDPに含めていけないようなものを含めている可能性がある。例えばレーニンの像を作ればGDPは増えるが無価値。雇用についても、仕事をしない役人を増やせば統計上雇用は増えるが、これも本質的にムダ。そうであればお金だけを与えて職業訓練をするような政策が望ましい。


麻生:今回「雇用調整助成金」というのをやっている。中小企業では給与の4/5、大企業では2/3を出すというものだが、去年までは8,000人だったものが、今年は88万人と100倍になった。レイオフさせないで訓練をやるという政策だが需要はそうとうにある。


深尾:しかし衰退産業に(労働者を)とどめてしまうというのが問題。増えているところにいかに移すか。今雇用は景気後退にもかかわらずそんなに減っていない。これは医療が増えているから。しかしこれも規制があって資格をとらなければいけないなど、移動を妨げる要因がある。これについては今日の日経に鈴木亘氏が問題点を書いている。規制改革をしながら、増えているところに人を移すようなお金の使い方が必要。


翁:介護や保育には財政支援が必要だが、規制を残したまま財政支援がついてしまうと非効率になってしまう。規制を変えていくことと財政をつけることを同時にやっていくことが極めて重要。


田中:留学生の話ばかりして恐縮だが・・・。現在日本にいる留学生は10万人程度。うち国費留学生は1万人ほど。残りの9万人は私費。彼らは為替の問題等で日本で生活していくのが大変な人もいる。これらの留学生に生活支援をすれば、そのお金のほとんどは使われるお金。消費性向は100%。長期的な有効にも役立つし、微々たる物だが景気対策にもなる。


中谷:留学生の話に反対するわけではないが、日本にも困っている人はいっぱいいる。農村の老夫婦などは現金収入もない。ベーシックインカムを導入すべき。現在の日本はみんな将来に対して不安を持っている。ベーシックインカムで最低限の生活を保障すればそうとう消費は刺激される。また先ほど吉川さんがおっしゃったとおり、この不況でヒットした人たちに景気対策をすれば確実に消費に回る。


麻生:リバースモーゲージみたいなもの?


中谷:リバースモーゲージは持ち家を持ってないとだめでまったく違うもの。そうではなく、必ずもらえるベーシックインカムという話。これを政府が言明すれば不安感がなくなる。


フェルドマン:賃金の話で言えば、介護の賃金は非常に低い。橋や道路を作るよりも介護のほうが地方のニーズは高い。介護の給料の半分を国が負担するというようなアイデアは今の地方のニーズにマッチした政策ではないか(いつまで続けるのかは議論があるだろうが)。


フェルドマン:奨学金について二点ほど。まずは科学を勉強する学生は徹底してサポートすること。日本の将来はやはり「科学」。もう一点は10年、20年先を考えると日本と世界のつながりを担う人材は今の3倍から4倍は必要。海外に出てまた日本に戻ってくる人を支援することも必要。


伊藤:先ほどの与謝野大臣の質問(GDPギャップをどの程度財政で下支えするか)に関してだが、マクロのGDPギャップだけで考えないほうがいい。現在、使われていない資源、つまり失業者を将来的に意味のある形で支援することが重要。雇用の流動化が必要。特に今後必ずニーズが高まる介護や高齢者向けサービスなどに現在の失業者が移動できるような政策は、将来的に生産性を高めることにつながる(確かにすべてが景気対策につながるわけではないが)。今後伸びる分野に教育訓練の投資をすることは意味がある。


二階:理科教育について。アジア16カ国で理科教育を考える「エリア*1」という組織が出来た。これの活用を考えたい。また現在すべての小中学校に太陽光発電を設置することを考えている。これも理科教育につながらないかと思っている。また奨学金については、アジアから2000人をフルブライトアジア版というような形でやっている。またアメリカからも200人迎え入れることをやっている。


クー:ここで出てきたアイデアはどれも素晴らしいが、現在の景気の落ち込みは想像を絶するし、この落ち込みはまだ続く。傷口をこれ以上広げないための対策をやる必要がある。傷口が広がってしまってから対策するのは非常に高くつく。今、地方には環境アセスメントが終わったような計画がいっぱいあると聞く。これらの計画をやりつつ長期的な話をしないと。確かにムダなものを作ることがいいとはいわないが、傷口を広げないための対策は絶対に必要。


フェルドマン:長期のことこそ「マクロ政策」。サプライサイドの政策は長期的な投資であり、需要創造になる。


麻生:公共工事はこの8年間で14.5兆あったものが6兆ちょっとになった。地方で32兆あったものが15.5兆くらいになっている。間違いなく地方は落ち込んだ。ハコモノはダメだが、道路があちこちで寸断されている、つながっているべきものがつながっていないので効力がなくなっていることもある。既に計画はあるが金がないというものはいっぱいある。アメリカではこれから計画を作る段階だが、日本には既にある。こういったものを前倒しでやっていくことは対策になる。また二階大臣の学校への太陽光設置の話だが、これはエネルギーとしてみればたいしたことはないが、地方の工務店にとっては重要なこと。こういうつなぎも大事だ。傷口を広げないための対策をやっていく。


麻生:あと保育についてだが、地方は待機児童がいない。都会に集中している。ここは規制を緩和しながらしっかりやることが大事。



個人的な感想


まあなんというか政治家側の危機感のなさが浮き彫りになるなあという感じ。

麻生さん
いろいろ考えてはいるが具体的な政策に落とせてないことが明らか。優先順位が的外れっぽい感じなのが不安。彼の頭の中は「地方」というキーワードの優先順位が高そうな印象をうけたがどうだろうか。あと「ベーシック・インカム」のところで「リバース・モーゲージ」を出してきたのは失笑。
与謝野さん
均衡財政派としてのポジション・トークは完璧。彼の「財政出動でどれくらい絶えられるか」というのは、「日本経済を下支えするのに必要な財政規模は?」という視点ではなく、「財政として支出できる金額はどの程度までか?」という視点で語られていることがわかって萎えたw
二階さん
どうしようもないなw 理科教育の話を長々とやってどうするんだw
河村さん
民間ではもっともやってはいけないタイプの議事進行お疲れ様です。ファシリテーション研修を受けるといいかもです。
伊藤先生
政策効果についてのこだわりが薄いような印象を持った。打ち出す対策が小粒な印象で、もっとどーんとした話をやって欲しいんだがなあ。
翁さん
保育の話に終始しちゃったなという印象。たしかに必要なことだし、景気対策としても意味はあるんだが、規制緩和の具体的な政策と一緒に打ち出さないといけないと思うんだが。総じて「ちょっと先のお話」的な印象強い。
河野さん
一番スタンス的には共感できた。資料では日銀の政策にも言及しており不満なし。ただ日銀の話は会合できちんと議題に出して欲しかったw
田中先生
留学生の問題の重要性はわかるが、この場に呼ぶべき『有識者』だったのだろうか。選考した人の頭の中身を疑う。しかもこの人の話で議論全体が「教育」という「長期的」かつ「効果がよくわからん」ものに流れていってしまったのも残念。
中谷氏
ベーシック・インカム」自体は有効だが、消費税20%はありえんだろ。なんというか今回の『有識者』は社会制度設計の改革にウエイトが置かれすぎてる感じ。もっと直接的で具体的な景気対策を期待してたんだが。
深尾先生
「デフレはまだ深刻ではない」という現状認識意外は特に異論なし。マイナス金利政策の効果を説明した資料は読んでみるべき。ただ、劇薬であるマイナス金利をやる前に、日銀に非伝統的金融政策させるほうがはるかにコストは低いとおもうんだがw
クーさん
いつもどおりの主張なんだが、危機感は一番強いという印象を受けた。「とにかく(財政出動を)やれ」というスタンスで一貫していたのは評価できる。が、金融政策に一言もないのはやっぱりバランス悪いと思う。「バランスシート不況」ならそれこそ銀行とか企業の不良資産を日銀が買い取る(政府紙幣でもいいや)といった提言が出てもいいのにね。
フェルドマン氏
言ってることは面白いんだが、短期の経済政策じゃないよねそれ、どっちかというと『年次改革要望書』の話だよねという印象。問題はサプライサイドではないんだよなあ、という心地よい脱力感が味わえました。


いずれにせよ、受け取る政治家側のリテラシー低すぎじゃね?ほかの有識者会合も見てみるかな。

*1:調べたけどよくわからん