コンピュータが仕事を奪う


2010年に出た本。ちょっと参照したくて読んだ。中身は数学のアルゴリズムがどのように実社会の問題を解決していったかの歴史を概観し、最近の機械学習ディープラーニング)の仕組みを解説し、最終的に人工知能がかなりの知的負荷を肩代わりしてくれるであろう未来に、我々はどのように自らの知性を活用・育成していくべきなのかを論じている。


著者の新井教授は「ロボットは東大に入れるか。Todai Robot Project」プロジェクトを主催しているだけあって、人工知能ができることについて実に現実的な視点を持っている。例えば入試の数学問題で、人工知能は「かっこいい補助線を引く」とか、「ひざポンの背理法の仮説を思いつく」とか「帰納法のうまい数式を導出する」みたいなことは出来ない。現時点ではひたすら数値計算でゴリゴリ解いていくというやり方だ。


しかし「このやり方でもそこそこのところにまでいけてしまう」ことがわかった。

人工知能が2021年までに東大に入れるかと言えば、きっと入れないだろう。しかし2011年のプロジェクト開始から2年が経って、『東ロボ君』はかなりの数の大学に入れる水準になった。東大でなくても、最終的に国民の皆さんがショックを感じるような大学に入れるようになれば、プロジェクトは十分役割を果たしたことになる」(新井教授)


「ロボットは東大に入れなくても、確実に人間の仕事を奪う」、NIIの新井教授:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/031300912/?ST=bigdata&P=2


さて、仮に東大は無理でもそこそこの大学に入れるくらいの人工知能が実用化された場合、どのような影響があるのか。新井教授は別の論考(「日本未来図2030 20人の叡智が描くこの国のすがた」所収)で以下の様な懸念を挙げている。

アメリカでは、箱詰めなどのやや多様性があって柔軟性が必要な作業を行う機械を1体200万円程度で大量生産を始めています。日本の労働市場で時給700円といった最後のラインを支えているのがそういうタイプの労働者だと思います。それが、1体200万円程度の機械に代替された場合には生活保護申請が加速度的に増え、社会保障制度が成立しなくなるおそれもあります。(前掲書 pp.125-126)


こういう調査もあるしな。
Improving technology now means that nearly 50 percent of occupations in the US are under threat of computerisation. | USAPP


ドローンだ、watsonだではしゃぐのもほどほどにな。