中国の不良債権どうよ?
まずは現状確認から。とはいえ、「”俺様国家”中国の大経済」でも触れられているように中国の銀行の不良債権は実態がよくわからんので、動きだけを見ていくしかない。
不良債権処理の現状
最初にとりあえず、中国银行业监督管理委员会なんかを見てみるわけだが、ここの2005年商业银行不良贷款情况表を見ると、2005年第四四半期の国営商業銀行の不良債権比率は10.49%。いやあ相変わらず高いねえ。ただ第一四半期は15.0%だったことを考えると改善ではある。この間に処理した不良債権額は5,491億元。
この数字はあくまで公式発表のもので、実際はこの何倍かあるだろといわれているのは公然の秘密なわけだが。
⇒大紀元時報−日本 "中国交通銀行が香港で上場を先行 ―四大国有銀行のスキャンダル続出後、中国の企みか―"
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/06/html/d15496.html
北京当局は、中国国有銀行の不良債権は既に2400億米ドルに達し、貸付金総額の25%を占めていると認めている。外部の計算によれば、不良債権は実質上 50%以上の数字に達すると見ている。中国国有銀行は実際に、資金と負債のバランスが崩れていて、外側が良く見えていても、内部は空っぽである。
さらに1999年にこの手の不良債権を処理するための飛ばし資産管理会社を作っているんだが、こちらが2005年第四四半期までに処理した不良債権累積額は8,398億元。ただしこれって累計だから、2005年中に処理したネットの不良債権額は1,512億元。
⇒四大資産管理会社:05年の不良債権処理は8398億元 2006/01/30(月) 17:34:01 [中国情報局]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0130&f=general_0130_001.shtml
どの程度の不良債権がこの資産管理会社に移管されたのかはよく知らないけど、まあ相変わらずでかいですなあ、ということで。一応眉唾前提で飛ばし資産管理会社への移管の規模を推計するための材料としては以下のような報道も。
⇒大紀元時報−日本 "林保華:中国国有銀行のブラックホールはどれだけ深いのか?"
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/05/html/d87187.html
中国メディアの最新の報道によると、工商銀行内部の人の話として、行内で固定資産と融資以外のリスク資産の精査・切離し作業が行われており、今回切離される不良債権の総額は、7000億元(845億ドル)近くで、作業は2ヶ月の内に完了する。また、2460億元(約300億ドル)もの損失債権の精査・引渡しの作業が5月15日前に完成し、切離しが可能となる。
ちなみにあれだけ騒がれた日本の不良債権はどの程度かというと、ピークの平成14年3月期で不良債権比率は8.7%(都市銀行)。ついでに平成4年からの都銀・長信銀・信託銀行が処理した不良債権の累積額は約77兆円(平成17年9月期まで)。
⇒金融庁 18.1.20 17年9月期における不良債権の状況等(ポイント)
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/ginkou/f-20060120-2.html
しかしこれくらいのことで驚いてはいけない。中国様はこの状況を自画自賛されているのだ。
中国様の自画自賛状況
⇒商業銀行「不良債権が半減」経営が健全化 2006/01/27(金) 11:41:35 [中国情報局]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0127&f=business_0127_006.shtml
中国銀行業監督管理委員会(CBRC、銀監会)は26日、主要な商業銀行の2005年における不良債権比率が大幅に下がり、経営状態が改善されていることを明らかにした。26日付で新華社が伝えた。
銀監会によると、不良債権比率は2005年に8.9%となり、03年の17.2%と比べて半減した。
⇒地方銀行「生存の危機を脱した」銀行監督当局が表明 2006/01/16(月) 23:52:00 [中国情報局]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0116&f=business_0116_010.shtml
中国銀行業監督管理委員会(CBRC、銀監会)の唐双寧・副主席(写真)は、城市商業銀行に関して、14日に開かれたフォーラムの席で、「すでに生存の危機を脱した」と述べた。中国新聞社が伝えた。
都市商業銀行が初めて設立されたのは1995年。これまでに総数は117行、資産総額は2兆元、年間利益はおよそ100億元に達した。また、不良債権比率は10%以下、自己資本比率は2.7%になったという。
いやそれ健全じゃないからという野暮なつっこみはしたってしょうがないんだが。
最近の急速な不良債権処理のドライブ要因はなんだ?
しかし最近の不良債権の減り方は異常だなあと思っていたら、なんとなくその理由が垣間見えるような記事があった。
⇒3カ月で30%減:政策的措置の不良債権処理の是非 2005/07/29(金) 20:00:30 [中国情報局]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=0729&f=business_0729_015.shtml
あまりにも大きすぎる不良債権の減少には理由がある。中国最大手の商業銀行で、国有四大銀行の筆頭である中国工商銀行は、今年になってから政策的措置として、数千億元規模の不良債権処理を行ってきている。これについては既報の通りだが、その背景としては、今年中には、工商銀行を株式会社化し、株式上場の目処を立てたいという、金融当局の思惑が見え隠れしている。
(中略)
実は、中国にとって、4−6月というのは「不良債権加速の時期」ともいえる。05年ばかりでなく、04年を見てみると、04年6月末時点の不良債権残高は1兆6631億元だか、同年3月末時点は実に2兆元を超えていた。この時も、わずか3カ月で4000億元程度、率にして20%程度が一気に減少している。
銀監会が正式の不良債権の統計を発表し始めたのは04年以降のため、それ以前のことは不明であるが、04年と05年のそれぞれ4−6月に不良債権が政策的措置で急減しているのは、もしかすると3月の「両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議及びその同時開催)」がきっかけになっているかもしれない。
(中略)
中国金融当局は、不良債権処理が加速していることを、政治的な手段を用いていることも踏まえて、喧伝している。これだけ多額の不良債権をいつまでも抱えているわけにはいかないので、時には政治的な介入も必要と思われるが、これが、国有四大銀行を上場させたいがための無計画な政治的な処理であるのならば、むしろ四大銀行上場後に大きな混乱をもたらす爆弾になりかねない。不良債権処理そのものが課題というよりは、四大銀行上場それ自体が課題となってきており、不良債権処理はその手段に成り下がって、本末転倒している感も否めない。
( ´,_ゝ`)プッ
ついでになんとなく陰毛論的な記事も。
⇒不良債権比率が「9月末で初めて一ケタ台」の真偽 2005/12/06(火) 12:21:56 [中国情報局]
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2005&d=1206&f=business_1206_010.shtml
で、中国様はさらに調子に乗って基準の厳格化なんてことを言ってるわけだが
⇒Yahoo!ニュース - ロイター - 中国が銀行の健全性基準を厳格化、07年全面導入視野に年内に一部導入=銀監会
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060116-00000830-reu-bus_all
不良資産の比率は4%、不良債権の比率は5%をそれぞれ上限とした。これは、主要銀行の現在の比率の半分以下となる。
これ普通に考えて無理だろ。不良債権で言えばあと3.9%減らさなきゃいけないんだろ?金額にして約5,300億元もの不良債権を処理しろってことなんだが。日本では同じくらいの水準に落とすのに約5年かかってるんだが(平成14年3月期:8.7%→平成16年9月期:4.6%)。
中国では債権を「正常類」「注目類」「低劣類」「疑い類」「損失類」の5種類に分類してるんだが、このうち下三つがいわゆる不良債権にカウントされる。この分類ごとの不良債権の推移を見てみるとなんか無理そうだとわかる。
分類 | 2005 Q1 | 2005 Q2 | 2005 Q3 | 2005 Q4 | 削減額 |
---|---|---|---|---|---|
低劣類 | 3410.1(2.3%) | 4092.8(2.79%) | 3955.0(2.65%) | 3336.4(2.19%) | 73.7(-0.11%) |
疑い類 | 9353.0(6.3%) | 4930.4(3.37%) | 5110.9(3.42%) | 4990.4(3.27%) | 4362.6(-3.03%) |
損失類 | 5511.4(3.7%) | 3736.2(2.55%) | 3742.4(2.51%) | 4806.8(3.15%) | 704.6(-0.55%) |
これ見ると不良債権削減の主な分類は「疑い類」(6.3%→3.27%で-3.03%)が大半で、それ以外の分類はそんなに減ってない。となると削減余地はかなり限られてるんじゃないのかと考えるのが自然だ。って、さらに飛ばすのかな?まあでも昨年だけで中国様は不良債権比率を3.8%減らしているわけだから一応もう一年あれば理屈上は処理できるってことか?
でもこの手の記事を見ると本気なのかとも思える。
⇒大紀元時報−日本 "中国、不良債権問題で銀行の人事にメス"
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/07/html/d91658.html
さらに上のロイターの記事では『上限を超えてしまった銀行にどのような措置がとられるかは、明らかになっていない。』ってことらしいので、もしかしたらこのタイミングで強制的な資本注入でもするってことなのかね。
まあ結局は国がなんらかの資本注入でもして最終的に不良債権処理を行うんだろうけど、その原資はどっから調達するんだろう?税金?それとも国有資産を処分して充当するのかな?それとも最近急に話が出てきた外資による資本注入でどうにかしようって言う腹なのかね。しかし以下のような報道を見てるとファイナンス出来るとも思えないなあ。
⇒(前出)大紀元時報−日本 "林保華:中国国有銀行のブラックホールはどれだけ深いのか?"
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/05/html/d87187.html
スタンダード&プアーズが2004年の7月に推計したところによると、こうした銀行の困難を除去しようとする場合、6500億ドルもの資金が必要となるが、これは中国のGDPの約4割を占める。中国の外貨準備は6000億ドル余りで、国内債務以外に2000億ドル余りの外債を抱える中で、政府が銀行を救うための資金はどこにあるというのだろうか?
まいいや。次いってみよー。明日はオルテガ編(エネルギー問題)だ。