ビクター売却

【2007/3/12 14:45 追記】
日本ビクターに関する一部報道について | ニュース | 松下電器産業株式会社
⇒ http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn070312-1/jn070312-1.html

3月10日に、日本ビクターの株式売却に関して一部報道がありましたが、何も決まっておりません。

とのこと。




FujiSankei Business i. 総合/ビクター買収、TPGが有力 サーベラスの1.5倍提示
⇒ http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200703110001a.nwc


売却金額がどうこうという点についてはあまり関心がない。そこまで楽しいバリュエーションでもないだろうと思うし。



ビクターの生き残る道はニッチでしょ


そもそもビクターは松下幸之助のある意味「負の遺産」だと思ってみていた。


ビクターの得意技術は「アナログの音響技術」だと僕は思っている。この時点で既にニッチの臭いがぷんぷんする。プロジェクトXで持ち上げられたVHSにしたって、あの手の一発逆転大博打を打つような上場会社はもともと嫌いだし、VHS自体の技術を考えても市場を混乱させただけなんじゃないかと醒めた見方をしている。


このようなニッチな会社が親会社の松下並みの商品ラインナップを持つこと自体がナンセンスだし(松下の売上は約8兆円、対してビクターは8,000億円程度)、それを放置してきた松下もどうかと思うが、放置されていることをいいことに好き勝手に事業領域を広げていったビクターの経営陣の感覚も嫌いだ。


で、とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、それともビクターを抱えている意味が全くなくなったという判断があったのか、なんにせよ松下はビクターをグループからはずすことを選択した。中村会長が行ってきた経営改革の最後の大花火かもしれない。


さて、グループからはずされたビクターははっきり言ってアイワ以下の会社じゃないかと思っている。ビクターの持っている優良資産って僕にはサザンしか思いつかないんですが*1。ってこれも賞味期限切れかもなあ。

非上場化を目指すTPGと、MBOを目指すサーベラス


で、売却後の経営体制なんだが、個人的な意見として言わせてもらえばサーベラスが提案しているMBOはありえないとおもう。


そもそも経営を苦境に追いやったのは現経営陣だ。松下は確かに過半数の株を所有してはいたが、そもそものグループ化の経緯(そしてそのときの松下幸之助の遺志)を尊重して、かなりフリーハンドに事業を行わせていたはずだ。そうじゃないとあの野放図は商品ラインナップ展開は説明がつかない。


MBOなんて、あたかも「松下の掣肘」があったかのように見せる印象操作に近いと思ったりするし、おそらく松下もMBOを選択させるようなことはしないだろうと思う。


結局は非上場会社にいったんした上で、事業領域を思い切って縮小し、再上場を目指すというシナリオに落ち着くと見ている。

ビクターの経営陣の夜郎自大ぶり


それにしてもビクターの経営陣はまだ自分たちの姿を勘違いしている。

当初は中堅AV(音響・映像)機器メーカーのケンウッドとの経営統合が有力視されたが、いわゆる「小が大を飲む」合併をビクター側が嫌がり頓挫。


いや、水増しした事業領域を持っているだけであって、「大」ではないんだ。こういったファイナンス的にナンセンスな感覚はどうにかしてほしい。

松下は今後、両ファンドに、アジアメーカーなどへの「転売制限」を求める考えだが、デジタル化の波に乗り遅れたビクターの映像技術に昔ほどの魅力がないのも確か。このため、「転売制限にはそれほどこだわらない」(関係者)との見方もある。


とあっさり書かれてるように、いまやビクターの事業領域はニッチでしかない。そもそもこの会社の基幹技術は「アナログ音響」だったわけで、そこに魅力を感じる中国、韓国のメーカーなんてない。デジタル関連の分野で自社調達できているコア部品なんてほとんどないわけだし。


にしても、日本の買い手が出てこなかった(ケンウッドもほんとに乗り気だったんだろうか?)のは象徴的かも。日本の会社が買ったら、おそらくは元ビクターの経営陣(&現場)の抵抗にあって、大胆な事業の縮小には手をつけられそうにもないと判断したのかもしれない(自分の会社でもそれが出来ずに悩んでいるんであればそれはそれで困ったもんだが)。


売却(&おそらく非上場化)されたあとにどの程度まで事業が縮小されるのかが僕の関心事だ。

*1:ビクターエンタテイメント所属