エドノミクス~歴史と時代劇で今を知る


軽い気持ちで読み始めたんだけど、想像以上に経済学の本で面白かった。著者二人が高校の同窓生というオチも驚きだった。


この本読んで260年間という冷静に考えればえらい長い期間を「江戸時代」とひとくくりにしてしまってることに気づいたですよ。この長い期間を経済政策の観点から「黎明期」「安定期」「改革期」「衰退期」「混乱期」といった感じで分け、その次代の経済状況と経済政策とその効果を分析した本。「吉宗以前と以降は、実は【前漢】【後漢】くらいに分断されてるのでは」とか面白い視点がいっぱいで、目からうろこを何枚も落としながら読み進めました。


飯田先生の著書なので、いわゆる通貨政策の観点からの分析が多いのはまあ当然でしょう。現代にもつながるわけで「リフレ派」の入門書としてもいい鴨。

それでも金融はすばらしい: 人類最強の発明で世界の難問を解く。


pp.459-473にわたる15ページの「訳者あとがき」を読めばある意味事足りるのではないか。


全部を頭から通読するというよりは、あとがきを読んだ上で個別の論点で気になったところを読むという読み方でいい気がする。


で、中身について言えば「最近楽観的に物事を考えるスタイルの本はいい本だ」というポリシーを持ちつつあるのですが、この本はちょっと楽観的過ぎるだろう、と(笑)。


いやでもやっぱりそれくらい楽観的なほうがいいんだよ!(ドン)←机を叩く

経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)


時代時代で変遷する様々な経営戦略理論を、「ケイパビリティ」と「ポジショニング」の2つの考え方の間を揺れる振り子として構造化した著者の慧眼が素晴らしい。


が、以前取り上げた「世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア」でも述べられていたが、この本で扱う経営戦略の大半は、統計的な検討を経たものではなく、「ケイパビリティ派」に含まれる「理論」の多くは作為的に抽出された「ケーススタディ」に基づく帰納的な「なんちゃって理論」であり、科学的な「理論」と呼べるような代物ではない。


一方で、ミクロ経済学の数学的モデルから演繹的に導かれた「経営理論」も存在するが(ポジショニング派の一部など)、現在の行動経済学(ようは人間の認知バイアスを前提とした行動分析)の知見が存在しない時代の産物であるため、こちらもあまり意味があるとも思えない。


では読む意味が無いかというとそれは違う。過去にどのような議論があったのかを知ることは、現在がなぜこうなっているのかを理解する唯一の方法だし、この先の未来を考える上での唯一の材料だ。今までなかった本。読むべし。

経済学者、未来を語る: 新「わが孫たちの経済的可能性」


以前リストに書いた時の短評をほぼ再掲。

「きちんとした書き手が予想する未来図」的な本をここ数ヶ月かなりの数読んだんだが、総じて皆「楽観的」に未来を考えているのが共通してて面白かった。「人類は今までもたくさん問題を起こしてきが、それになんとか対処してきたからこそ今がある」というスタンス。破滅論本を手にとって時間を浪費するようなことは今後ないだろうな。


いい本。

脱・店舗化するリテール金融戦略: バンクからバンキングの時代へ


んー、原著が出版されたのは2012年12月。当時としては「これからのリテール金融の潮流」としてかなり正確に近未来を見通した本だった。が、2015年に読むとただの「答え合わせ」をしている気分になってしまう。当然ながら著者の責任ではない(褒めてる)。


この本はアメリカの金融事情を書いた本であり、この流れが日本にそのまま当てはまるわけではない。が、日本の金融も、アメリカなどで明らかにゲームのルールが変わったことを意識せざるをえなくなっただろうし、その意味でこの本はこれから日本の金融で行われる議論の方向性を示している。


「FinTech」というバズワード自体はあまり好きではないけど、乗っからないといけないバスになってるなあと思う(ポジショントーク)。