コンピュータは数学者になれるのか? -数学基礎論から証明とプログラムの理論へ-


で、人工知能というわけではないのだが、こないだ「400年をかけたケプラー予想の解決は、コンピューターの力も証明した « WIRED.jp」なんてな記事を読んだせいもあって、なんとなく気になっていた証明支援系に関係ありそうな本を本屋で見かけたので買ってみた。


これが当たりで、ヒルベルト形式主義の話から、ゲーデル不完全性定理チューリングマシンによる「自己証明するプログラム」の話などが一つの流れとして書かれていて、そこに「P対NP問題」がからんできて・・・という感じで非常に面白い。そして最終章では形式主義から導かれる証明支援系の話から、HOLなどの証明支援系プログラム言語の可能性、さらには数学定理の機械学習と人間との協働へと話は広がっていく。


うん、面白い。なんか関数型プログラミング言語勉強したくなった。OCamlとはHaskellとかの解説書買ってみるかなあ。やっぱりこれか?これなのか?





コンピュータが仕事を奪う

コンピュータが仕事を奪う

テクノロジーが雇用の75%を奪う

テクノロジーが雇用の75%を奪う

テクノロジーが雇用の75%を奪う


で、これは買っちゃダメな本。だいたいさあ、タイトルとおりに75%もの人たちの仕事が奪われるような技術がなんの抵抗もなしに導入されるわけがないだろ?と。


時間がなかったので本屋で立ち読みすることもなくポチったんだけど、まあダメな本でしたわ。で、一番笑えるのが本書の最後の方に「反論を検討する」章があるんだけど、ここに出てくる「反論」、例えば「人類の長い歴史で、テクノロジーがある種の仕事を消滅させても新たな種類の仕事が生まれてきたよね?」というごく普通の反論に対して反論できてないんだよね。なんか「今まではそうだったけど今回は違う!」と言ってるだけで、説得力なし。まあタイラー・コーエンも矛盾したことを堂々と言ってたりもするから、あんまり目くじらをたてるほどのことでもないのかもしれんが。

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)


で、人工知能って現在どのへんまで進んでるのん?というときのガイドブックとして読んだのがこれ。以前「東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」」も読んだが、こちらのほうがちゃんとした本。過去の人工知能研究の歴史から、ディープラーニングというブレイクスルーの意味、そして今後の方向性がわかる本。最終章に社会的影響への言及もあって読んで損なし。


しかし松尾先生売れっ子になりましたなあ。

コンピュータが仕事を奪う


2010年に出た本。ちょっと参照したくて読んだ。中身は数学のアルゴリズムがどのように実社会の問題を解決していったかの歴史を概観し、最近の機械学習ディープラーニング)の仕組みを解説し、最終的に人工知能がかなりの知的負荷を肩代わりしてくれるであろう未来に、我々はどのように自らの知性を活用・育成していくべきなのかを論じている。


著者の新井教授は「ロボットは東大に入れるか。Todai Robot Project」プロジェクトを主催しているだけあって、人工知能ができることについて実に現実的な視点を持っている。例えば入試の数学問題で、人工知能は「かっこいい補助線を引く」とか、「ひざポンの背理法の仮説を思いつく」とか「帰納法のうまい数式を導出する」みたいなことは出来ない。現時点ではひたすら数値計算でゴリゴリ解いていくというやり方だ。


しかし「このやり方でもそこそこのところにまでいけてしまう」ことがわかった。

人工知能が2021年までに東大に入れるかと言えば、きっと入れないだろう。しかし2011年のプロジェクト開始から2年が経って、『東ロボ君』はかなりの数の大学に入れる水準になった。東大でなくても、最終的に国民の皆さんがショックを感じるような大学に入れるようになれば、プロジェクトは十分役割を果たしたことになる」(新井教授)


「ロボットは東大に入れなくても、確実に人間の仕事を奪う」、NIIの新井教授:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/031300912/?ST=bigdata&P=2


さて、仮に東大は無理でもそこそこの大学に入れるくらいの人工知能が実用化された場合、どのような影響があるのか。新井教授は別の論考(「日本未来図2030 20人の叡智が描くこの国のすがた」所収)で以下の様な懸念を挙げている。

アメリカでは、箱詰めなどのやや多様性があって柔軟性が必要な作業を行う機械を1体200万円程度で大量生産を始めています。日本の労働市場で時給700円といった最後のラインを支えているのがそういうタイプの労働者だと思います。それが、1体200万円程度の機械に代替された場合には生活保護申請が加速度的に増え、社会保障制度が成立しなくなるおそれもあります。(前掲書 pp.125-126)


こういう調査もあるしな。
Improving technology now means that nearly 50 percent of occupations in the US are under threat of computerisation. | USAPP


ドローンだ、watsonだではしゃぐのもほどほどにな。

数学の言葉で世界を見たら 父から娘に贈る数学


読み終えた直後にこんなニュースが。
量子もつれが時空を形成する仕組みを解明〜重力を含む究極の統一理論への新しい視点〜 | Kavli IPMU-カブリ数物連携宇宙研究機構


そもそもはtwitterで見かけて、著者のブログを見て、さらにタイトルに惹かれてポチったわけだが、えらくタイムリーな読書をした気分になった(典型的な認知バイアス)。


本書で取り扱う内容は「ベイズ推計」「指数・対数」「素数」「無限論」「ゲーデル不完全性定理」「トポロジー」などの様々な領域。タイトルの通り「数学で世界を捉える」ためのいろんなとっかかりをリスト化してくれてるような本。


だいたいの内容はすでに知っているものだったが、論理展開などに新鮮な視点があった。こういった本に加えて、「数学ガール」シリーズや、「虚数の情緒―中学生からの全方位独学法」、「新装版 オイラーの贈物ー人類の至宝e^iπ=−1を学ぶ」あたりを中学生の子供に見えるように置いといたら勝手に数学に親しむのではないか、とか都合のいいことを考えてしまいますがどうなんでしょうね。


自分が中学生だったときにこういう本があれば今とは違った人生だったような気がする。中学2年の時の数学教師が嫌いで数学から距離を置いてしまったんだが、こういう本で独学する機会があったらなあと。結局は中3で通いだした進学塾で数学の面白さは再発見できたんだけど、理系進学する気はなくなってたんだよなー。おっさんの繰り言ですが。





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